内容説明
朝、自分のベッドで目をさましたとき、リーはその日がなぜ他の一日と違っているのか、理解できなかった。しかし、今日が特別な日であることは確かだった――魅力的な妻と愛しい息子を持つ男。その申し分のない生活にも、いつのまにか滅びの風がやってくるのだった――表題作を含む五篇を収録した連作短篇集。栗本薫が“死を見つめよ”のメッセージを核に、透徹した視点で、人類の歴史と滅亡について物語る問題作登場!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
けいちゃっぷ
8
20世紀の終わり(世紀末)に人類は滅亡への道をたどる。劇的な「死」ではなく、徐々に徐々に。そんな思いをこめて書かれた物語なのだろう。なので派手なシーンはなく、逆に思弁的な語りの部分が多くて、いささか読みにくさはあった。281ページ2009/06/10
背表紙裏
6
作家・栗本薫氏による死を思うことを題材にした短編集。今年(2011年)だからこそ思うところがある作品。作品の中で日本のチェルノブイリはいつ暴走するのかとか、東京の大地震はいつかなどを思案するシーンがあり、とても今を思わせる。内容的に暗い死にとりつかれるすぎている感じはするが、滅び=滅亡という線引きは人間のエゴが大きすぎるという姿を魅せてくれる魅力的な作品2011/10/25
酔花
2
盛者必衰。生きとし生けるもの皆滅びる。幾多もの滅びを趣向を変えてありありと提示する本作に対し、ペシミスティックに浸りすぎているという指摘がなされたのも頷ける。だが、栗本薫はその類いの批判を受けると覚悟してなお、滅びの本質を描きたかったのだろうと後書きを読んで思う。同時に、人が滅びようとも世界は在り続けるといった巨視的な視点を挿入することにより、滅びを意識することによる生のありかたが浮かび上がる。メメント・モリ。死を忘れるな。2014/09/20
松
2
もっと若いとき、20世紀のうちに読むべきだった。2009/03/05
眠りスナメリ
1
学生の頃に読了。栗本薫・中島梓名義も含め、この作品が一番好み。