内容説明
「ぼくは、ゲルニカっていう本を読んだんだよ。その中に、ちょっと、おもしろい…というか、気にひっかかることがあったんだ」TVディレクターの安田修平は、ふとしたことから、日本がすでに戦争状態にあるのではないかという疑惑にとらわれた。しかし、妻も同僚も一笑に付して相手にしようとはしない。心を閉ざし、何かにおびえ、見えざる影に追われる修平。「戦争ははじまってるんだ…いまは戦時下なんだ。…皆、見ないふりをしてごまかしてる…そうなんだろう?」おそるべき感性で、見えざる恐怖を鮮やかに描き出した問題長篇!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おかむー
40
1987年初版のこの作品を、発売当時に読んだ…と思ってたのは勘違いだったか、これだけ特異な作品が記憶に残らないはずないもんなぁ。『よくできました』。主人公・修平はピカソの絵にもなったゲルニカに関する本に感じた違和感から、誰も気づかぬまま日本がすでに戦争状態にあるという確信に至る。修平と同じ思いを抱く女・ルカとのやりとりはどう見ても妄想全開のちぐはぐさ、文中でも本人が言及しているとおり“電波”を受信しちゃってる人たちの暴走する思考で一冊まるまる費やされるかと思いきや、ラスト一行が秀逸ですね。2015/04/10
Tanaka9999
6
1987(昭和62)年発行、早川書房の文庫本。SF的なフィクション世界や「やおい」的閉鎖世界での(個人のものを含む)滅びはかなり多く書いている作者。しかし、同時代の一般的な社会での滅びはこれ1作のみか。主題としてはファンタジー的な社会でのものと同じのようだが、現代に舞台を持ってくると「社会派」っぽくなるから不思議。で、この作者は「社会派」のものは書けないらしく、どうもギクシャクしているように感じる。2022/05/02
いおむ
6
既読済です。「1984年」つながりで栗本薫さんの作品ということで購入。怖い小説。2018/07/08
カタリナ
1
最後の一行。2008/12/23