内容説明
多忙な現代人が忘れてしまった根源的故郷への思慕を胸に、鄙びた温泉宿を訪ね歩く場末感覚に満ちた「颯爽旅日記」。日常生活の狭間に突如現れる異世界=夢の領域をシュールなイメージとともに採取した「夢日記」。自らの貧困生活を滑稽かつ痛切に綴った「断片的回想記」など、生と死の間で揺らめく人々の物哀しさを描き続けてきた孤高の漫画家、つげ義春の世界を一望する新版エッセイ集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アズル
15
「必殺 するめ固め」や「夜が掴む」などのおおもとの夢が書かれていて面白かったです。夏目漱石の「夢十夜」を思い出しました。解説の伊集院静の「昔の遊び人の顔です」という発言にへぇ、と思いました。2014/02/13
田氏
14
その漫画作品と同様に、文章がなにか重くて陰鬱な空気をまとっている。しかし、それをひけらかして同情を誘うような湿っぽさがない点もまた共通している。自分のことを記していても、まなざしは他人事を見るように乾いている。そこになにか小説のような風情がうまれていて、だから、解説で伊集院静が「上質の私小説に、これに似た感覚をふくんだものがある」と評しているのには、まさにそれだと腑に落ちた。『夢日記』にはのちに漫画のかたちを得ることになる夢も収録されていて嬉しい。『外のふくらみ』『ヨシボーの犯罪』『必殺するめ固め』など。2022/04/09
春ドーナツ
13
「流れ雲旅」という本が50年振りに復刊された、という話を耳にして(目にして)久しぶりにつげさんの本を読む。この機会を利用して再読の旅に出る。竹中直人さんが「無能の人」を映画化されたときまで、つげさんのことはよく知らなかった。丁度筑摩書房から全集の刊行が始まり、買い揃えていった。本書を含めて2冊のエッセイ集が新潮文庫から出たのもそのころのことだ。で。同書を2017年に再読した記憶は全くなかった。対として認識している「貧困旅行記」は読み返していない。当時の私に何があったのか。何もなかったと思う。今回は「貧困旅2023/04/10
tama
13
自本 発掘で この人がこの当時見ていた夢はワタシがその頃見ていた夢に似たところがあります。大便する場所がなぜか人目にさらされやすいとか、ちょっと危険な取り回しになっている階段とか。特に風邪ひいて熱出てるときなんかは障子一杯の大きさの人形の顔とかよく出たなぁ。そういう意味でつげさんの病気な感性が目一杯入った本。絵も沢山入ってて楽しめる。2015/08/10
鏡子
13
夢日記はおかしくて笑ってしまった。(悲しい笑いです。)実体験をもとに描いていた漫画が沢山あったんだな。旅をするにあたって、「最も貧しそうな宿」を選ぶ所に感性が表れていると思った。戦時中の貧困で暗い幼少時代を知れてよかった。この人の作品の底辺には、貧困とか、倦怠とか、そういうものの中に、一瞬ぼんやり光るものがある、そこが好きだ。「四倉の生」がよかった。自分が母の腹に宿った場所を想い、そこを訪れたいと想う事。2013/03/09
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