内容説明
姉妹が奏でる究極の愛憎、十五年来の友人が育んだ友情の果て、決して踊らない優子、そして旅行を終えて帰ってくると、わたしの家は消えていた……疾走する「生」が紡ぎ出す、とても特別な「関係」の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
43
『二人の場合』と『風』は連作のような印象を受ける。共に二人の女性、一方は双子のような会社の同僚、もう一方は姉妹の物語だが、登場人物たちに対しては、神の視点のように突き放した距離感がある。前者の一節「昔の女の人たちに比べたら、今の女の人たちはずっと、いろんな生き方が認められてきてるってわかってても、あたしは、時々、すごく息苦しい」。登場人物たちは記号化され、個性が剥奪されている。同じような環境のはずが、二人の選択が異なる方向へ進む。女性の生き方に興味を惹かれる、それが女性の不自由さの理由だと思われるのだが…2025/12/20
ちょき
43
筆圧(文章から受ける迫力)の高い短編集。◇「予感」掌編。いつかこうなることは予想していた。って、旅行から帰ったら家がない主人公。あわてず実家に電話したら、それが生きてる証だという家族。なんたる筆圧の高さ◇「ダンス」小さい頃からダンスを踊らない女の半生。俺だっていいたい。「どうして踊らないの?」◇「二人の場合」割とめんどくさい女どうしの友情物語。だがしかし、読了後の余韻が深く染みる。◇「風」表題作。緑地の奥に住む老姉妹。この二人をどうにかしてあげて。それに真剣に読んだこの気持ちもどうにかして欲しい。!2017/04/29
ポテチ
24
表紙がお弁当の包みみたいで可愛い。短編集。決して踊らない優子の話と、女性あるあると、表題「風」。遠く引いて読むとなんとなくいいんだけど、近づくと少し物足りない。でも、他作品も読みたい。2019/08/07
エドワード
20
「風」は五十代の姉妹の物語。ある時、亡き父の残した緑地の平屋へ越して来る。若い頃はさぞ美しかったろう、でぶの姉と悪霊の妹。仲が良くても悪くても、老いては共に暮らすしか道はない。外国の童話のような不思議な世界観。「二人の場合」は現代の日本を生きる二人の女友達の物語。共通点は<大声で笑い、カワイイを連発する女が大嫌い>。しかし結婚して娘を持つ実加と、退社して気ままに暮らす未紀の心は徐々に離れていくが…くされ縁とはよく言ったものだ。「自分がつまらない人間であることを認めていく過程そのものが人生なのだ。」が至言。2018/04/24
nemuro
8
たぶん本書が2017年、最後の読了本。青山七恵の本は、そう多くはありませんが、何冊か読んでいて、独特の観察眼みたいなところが好きな作家。ですが、本書に関しては、ちょっと違った感じで、正直なところ、あまり理解できないままの作品もありました。そんな中、「二人の場合」が辛うじて、ふむふむ、そうかそうかと。2017/12/30




