内容説明
画学生として訪れたフランコ独裁末期のスペイン。そこで出会ったフラメンコのカンテ(唄)が人生を変えた。ヒターノたちの唄によって、文字以前、文明以前の人間のエネルギーに直接触れることができたのだ。それこそがスペインの魅力=呪力だった――。画家兼カンテの唄い手である著者が、スペインと日本の本質を鮮やかに、辛口の大人のユーモアで描く。当代随一の渋くて滋味豊富なエッセイ集。
目次
スペインは赤い
スペイン人はねじれる人
日本人はあせる人
ねてもさめても
あとがき
文庫版あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mocha
98
スペイン在住画家である著者が、画風そのままの陽気で勢いのある筆で記したエッセイ。20年以上前に福音館「母の友」に連載されたもので政治経済に関する話には時代を感じるが、振り返って「そんな時代だったのか」と気づかされることも多い。NOと言えない日本人への痛烈な批判は耳が痛いが、始終NOばかりのネットの住民についてどう感じてるのだろう?近著を読んでみたいと検索して10月31日に亡くなられたのを知った。氏のカンテを聴いてみたかった。ご冥福をお祈りします。2016/12/05
cuipa
2
こういう黒い笑い大好きなんだけど、その筆で「海外を知る私の日本批判」をしたり顔でされると途端に好感度さっぴかれるんだよなー。でも、スペインのしょーもなさサイテーさの赤裸々な暴露にノロケのような強烈な愛情を感じるので、日本に関してだって糾弾に愛情と理解をも滲ませてほしい。それをしないならただ単に性格が(略) しかし!「うやむや日記」でも思ったけど私はマリアが好きだ。この生ける妖怪と毎月毎月丁々発止して家賃を値切るのは地獄の作業である。しかし作者の確かなノロケに、私もマリアが好きでしょうがない。2015/10/21
薫風堂
2
こういう便利で自分勝手で、自由にあっちへ行ったりこっちへ来たり、一瞬のうちに都合のよいほうへ乗り移る「自分」というものを、日常的に心の中に飼っておかないと、闘牛という、不思議な審美眼によって支えられる「芸術」を理解したり、まして愛したりなど、とうていできないのである(148頁)/伝統も芸術も文化も、すべて目に見えるものである。・・・古いものが現存する、ということの力を日本人は甘く見ている(179頁):なんとも魅力的な荒々しい文章。さらりとも読めるけど、ゆっくりと考えながら読む。2010/09/07
冬眠
1
スペインの話題のパートは面白く読めたが、日本への批判になってから少々白けた2013/02/01
kayoshi
0
★★★・・2011/02/28