内容説明
平成の与謝野晶子とも譬えられ、恋や家族を高らかに歌い上げた歌人が他界したのは2010年8月。だが没後「河野裕子短歌賞」が創設されるなど、その評価はますます高まっている。
夫の永田和宏や娘の永田紅などによって、家族の肖像は多く明らかになっているが、今回その息子が初めて母の生涯を丹念に描いた。
誕生から幼少期を過ごした熊本時代、精神を病みながら作歌に目覚めた青春時代、永田和宏との出会いと結婚、多くの引っ越しを重ねながら子育てに勤しみ、短歌にも磨きがかかった時代、アメリカでの生活や晩年の闘病、そして最期……。
これまで未発表だった日記や、関係者への取材を通して明らかになる歌人の日々から、著者は新たな作家像を浮かび上がらせる。精神を病みながらも、同姓だった無二の親友と築いた文学的信頼関係。しかも彼女の自死。また最期を看取りながら病床で一首一首を口述筆記した様子は、読む者を深い感動へと導いていく。
対象への距離感と親子の親密感とがみごとに融合した、評伝文学の傑作である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
kaoru
14
64歳で亡くなった歌人、河野裕子さんの生涯を息子永田淳さんが綴った一冊。少女の頃から生一本で早くに才能を現した河野さんの生い立ちと結婚、子育て、アメリカ生活、輝かしい受賞歴、闘病などが身内でなければ書けない親密さで描かれる。病を得てからの錯乱ぶりは読んでいても苦しいが、巨大な芸術的才能を持つ人はその反作用としてこうした面があるのではと思わされた。義父・嘉七との大喧嘩など貴重な証言が多い。短歌を通じてつながっていた永田一家の様子が良くわかる。「全身歌人」とでも呼びたい河野さんの短歌をさらに読みたくなった。2019/07/02
双海(ふたみ)
11
母の作歌に対する根源的資質とは何だったのか。没後ますますその存在感が高まる歌人の生涯を、その息子が「家族」と「作品」から描く。これまで未発表だった日記や、関係者への取材を通して明らかになる歌人の日々から、著者は新たな作家像を浮かび上がらせる。精神を病みながらも、同姓だった無二の親友と築いた文学的信頼関係。しかも彼女の自死。また最期を看取りながら病床で一首一首を口述筆記した様子は、読む者を深い感動へと導いていく。2024/03/09
てくてく
10
「評伝」が何を目指すものか理解していないため、タイトルについてはひっかかりがあるものの、歌人・河野裕子の一生を同じく歌人である息子の視線から描いたものであり、有名なエピソードの裏話や、知らなかった事柄、そして有名歌人の家族として生きることの楽しさと難しさと覚悟を感じる良い本であった。2020/01/24
はち
8
永田淳さんによる、母親、河野裕子さんの評伝。書きたいことが山ほどあるのだけれど、言葉を捕まえることができません。正直、読んでいて辛い部分もある作品ですが(特に裕子さんのガン発覚後は、知っていたとは言え本当に辛い。ここに出てくる人たちを知ってしまった今ではなおさら)普通の暮らしを生き抜いた歌人の姿を知ってもらいたいと思うのです。出来うるなら、歌を詠まない人にも届いて欲しいし、歌を詠むけど河野裕子さんの作品に触れたことのない人にも届いて欲しい。そして、裕子さんに私もお会いしたかった。塔にいると、五年経ってもそ2015/08/31
門哉 彗遙
5
著者が生まれる前のご両親の話の時は、少し堅苦しくこ慣れない文章を読まされている感じが拭えなかったけれど、家族としての母の話となってきたところから、俄然面白くなってきた。子供の目を通して母としての河野裕子の人間像が強烈に浮かび上がってきた。そして最期はやはり涙が止まらなかった。2024/07/15




