内容説明
結婚おめでとう、メッセージカードを書く手が震える。大学時代、新婦とは一番の親友だった。けれど恵には招待状が届いていない。たった6人しかいない同じグループの女子の中で、どうして私だけ線引きされたのか。呼ばれてもいない結婚式に出席しようとする恵の運命、そして新婦の真意とは(「届かない招待状」)。進学、就職、結婚、出産、女性はライフステージが変わることでつき合う相手も変わる。「あの子は私の友達?」心の裡にふと芽生えた嫉妬や違和感が積み重なり友情は不信感へと形を変えた。めんどうで愛すべき女の友情に潜む秘密が明かされたとき、驚くべき真相と人間の素顔が浮かび上がる傑作ミステリ短篇集全5篇。/解説=大矢博子
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
馨
285
短編集。帯にどの話も衝撃展開とあり、期待しすぎてしまいました。どの話もプチどんでん返しみたいなものはありましたが、その程度です。ストーリー的には読み手を引き込む力があるのだろうと思います。『帰らない理由』が1番ミステリーっぽくて良かったです。作者は結構若い年齢の作家さんなのに、主人公が学生、社会人、老年と色んな世代の女性でしたが違和感ありませんでした。2019/03/12
さてさて
246
『だって、私は、彩音から招待状をもらっていない。自分が呼ばれてもいない式に出て、しようとしていることを考えるだけで、内臓が下に引っ張られるように重くなった』。そんな衝撃的な前提設定から始まる〈届かない招待状〉など5つの短編が収録されたこの作品。そこには、読者まで思わず憂慮してしまうような不安定な状況から始まる物語の姿がありました。さまざまなシチュエーションの物語が読めるこの作品。そんな物語が強固な繋がりを見せるこの作品。“どんでん返し”の先に待つ5つの読後感の良い物語をサクッと味わえる、そんな作品でした。2025/07/11
夢追人009
229
今だけと言わず女同士が永遠に良好な関係を保つには秘密を抱えていちゃあ駄目で正直に打ち明ける事が大事だとつくづく感じさせてくれた芦沢央さんの意外な仕掛けがたっぷりの「ない」尽くしの短編集著作3冊目。『届かない招待状』疎遠だった人と和解出来たら良いね。『帰らない理由』噂に惑わされずに信じられるのが真の親友。『答えない子ども』溺愛も期待し過ぎも駄目。神経質でなく大らかになれ。『願わない少女』マンガ大好き少女二人のまさかの意外な未来。『正しくない言葉』老母と娘・嫁姑が諍い遠慮なしに互いを尊重して平和であれと願う。2019/03/28
のり
211
5話からなる短編集。届かない言葉や想いのすれ違いってホントに悩まされる。日本語や文化が多様な為か?それともストレートに表現出来ないからなのか?本作では誤解が解けたから問題はないが実際には多々ある。生きるってやっぱり難しい。「届かない招待状」「正しくない言葉」が特に良かった。2020/01/10
イアン
195
★★★★★★★★☆☆女の友情をテーマとした芦沢央の短編集。仲良しグループの中で自分にだけ届かなかった結婚式の招待状、事故死した同級生の部屋から立ち去らない少女、嫁からの手土産を口にしなくなった姑…。各年代の女性が抱える嫉妬や不信感を切実に描き、それでいてミステリとしての意外性も併せ持つ。独立した短編としても面白いが、各編の繋がりに気付いた時にこそ最大の驚きがある。デビュー3作目とは思えない熟練さを感じさせる作品なので、未読の方は「ドロドロした人間関係を描いたイヤミスだ」という前情報だけで手に取ってほしい。2023/09/29