内容説明
ようやく雪が消えて、海辺の崖の上の日だまりに桜草が芽を出すと、釧路の海霧のシーズンである。冬はひたすら寒い北国の自然の中で、季節のうつりかわりに敏感に反応する著者の詩。雪、湿原、石狩連峰の稜線の美しさ、針葉樹林などの自然の息吹や人間のいとなみを、洗練された文体で謳い上げる。エキゾチックな北海道の大自然を舞台に、小悪魔的なヒロイン・怜子が活躍するベストセラー『挽歌』の著者、初めてのエッセイ集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あ げ こ
9
人の営みになど目もくれず、ただ粛然と、降り積もる雪。美しく、厳しく、様々に表情を変える、自然。寄り添うよう、淡々と、時に見惚れながら、その白さを、その過酷さを受け取るものの、強さを感じた。だぶついた時間を持たぬものの、静かで、沈着な、強さ。緩みなく、無駄を、余剰を持たず、必要な量を知り、それだけを、身に備え、目一杯、使う。何か一つ、滲み出てしまうことすら、嫌うかのように、言葉さえ、朴訥と佇む。滾り、崩れ行く激情を描いても、端正な煌きを失わぬ、いくつもの言葉たち、その源、その在り処となる、世界の魅力を知る。2014/12/28
y_e_d
2
新聞等に掲載した短文エッセイをまとめたもの。巻末の渡辺淳一さんの言葉がすべてを物語るように、原田さんの文章の美しさが際立つ一冊。何気ない日常を、こんな風に書ける才能に羨望を感じる。北海道を愛していたこともよく分かる。ほぼ長編しか読まない自分にも清々しい作品でした。2018/09/10