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内容説明
動物もコミュニケーションを行うが、物語を語れるのは人間だけである。「物語」とは、人間の言語活動に特徴的かつ本質的なものである。では、ここでいう「物語」とはいったい何か――。フランス構造主義の物語論を中心に、その理論を紹介しつつ、カフカ、田山花袋、マルケスから、「シン・ゴジラ」「エヴァンゲリオン」「この世界の片隅に」まで、具体的なテクストを分析し、物語そのものの構造を論じ、設計図を明らかにしていく。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Yuma Usui
31
物語を科学で捉え解説した大学講義のような解説。小説好きはもとより物語の創作者にも気付きが多いと思われる示唆に富む内容。物語をその内容ではなく形式に着目した学問である物語論(ナラトロジー)を基に、前半で物語がどんな要素で成り立つか理論を解説し、後半で具体例を古今東西の小説や映画、アニメで解説。物語に流れる時間は叙述の詳しさに拠る点や、物語の語り手は誰の視点なのか、フランス語や日本語など言語の違いが物語に与える影響など面白い。明治以降に「〜た」といった過去形の言葉を用いた物語が生まれたとの指摘には驚いた。2021/04/16
MIKI(magicrose)
27
前半の理論編では、物語の定義、物語論とは、物語論の系譜、そして物語論の基礎知識をざっと知ることができました。興味深かったのは、"話法"の解説。なかでも、英語やフランス語などでよく見られる"自由間接話法"について、さまざまな翻訳例を挙げて日本語の言語習慣を解説する第4章がおもしろかったです。 後半の分析編では、さまざまなジャンルの物語を例に「物語がどう出来上がっているか」について、物語の展開方法や叙述のスピード、文体、視点、語りの構造といった切り口からの解説が新鮮で楽しく読みました。2020/03/11
ラウリスタ~
23
前半の「基礎(理論)」編はとてもよくまとまっていて勉強になる。ジュネットの解説が7割ほど、2章の「物語の時間」と3章の「視点と語り手」は読んで欲しい。ただ残念なことに、ジュネットの「異質物語世界」に関する説明(47ページ)が間違っている(著者自身の物語論と混ざってしまったそうだ)。改版があれば修正していただきたい。後半の応用は、アニメオタク(なのか知らないが)らしい選択、ただし理論編で説明したものが「ほら実践されてるでしょ」とそれぞれ2ページほどでさらっと触れられるだけなので、単に読書紹介っぽいのが残念か2018/10/15
三柴ゆよし
22
入門書だけあってやや大味ではあるが、物語論の概要をささっと知るかおさらいするには最適の一冊ではないか。プロップからジュネットにいたるエッセンスを簡単に紹介する基礎編と、それによって各作品を眺めていく応用編の二部からなり、そのうち、後者についてはもうすこしブラッシュアップしてもよかったのではないかともおもう。とはいえそこでとりあげられた作品はどれもみな良作揃いで、南米文学や現代中国文学からもわりと贔屓目に採択されているので、海外文学初心者のための読書案内としても有用かもしれない。なかなかの良書であった。2017/12/11
miori
20
物語についての考察。特にジュネットの『物語のディスクール』に拠っている部分が多くありました。小説の視点について、以前から興味があったので手にしたのですが、この本を読んで、もっと詳しく学びたいと思いました。ということで『小説のしくみ』を読んでいる最中です。2022/09/22