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内容説明
イエスはローマ総督によって処刑された。しかし、まだそれは帝国にとっては辺境属州のささいなできごとでしかなかった。彼を神の子と信じる人びとの群れは大多数の帝国人からは無視されるか、まともに扱われることのない、いかがわしい、忌まわしいと見なされる状況にあったが、徐々に教徒の数と伝道の地域を拡大していった。それは結果的に地中海の心性を、そして社会のあり方そのものをも変化させるほどの影響を残したのである。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
MUNEKAZ
11
初期のキリスト教が、ローマ帝国・市民からはどう捉えられていたのかについて。無神論者、性的淫乱など様々なレッテルを貼られ警戒されていくキリスト教であるが、その迫害の初期の主体は市民にあり、帝国側はむしろ無用な告発を戒める側であったというのは意外である。またキリスト教側も人間の平等性を謳いながらも奴隷制を否定しない、信者の妻帯や蓄財を許すなど、教義の純粋性よりも当時の地中海世界の心性に従って普遍性に重きを置いた活動をした点は、のちの国教化につながる部分として興味深かった。2018/01/16
kure
1
再読。本書は古代キリスト教がローマ帝国において既存の文化や社会システムの中でどのような立ち位置にあったのかを論じているが、社会史のフレームワークを用いてローマ帝国史研究の視座から記述しているのがやはり新鮮に感じた。2020/07/29
tanukiarslonga
1
辺境のカルトの一つだったキリスト教がいかにしてローマの国教になるまで勢力を拡大していったか。明確な理由がわかるわけじゃないが微妙な巡り合わせ的な事情がいかにもリアルな感じ。『沈黙』に描かれるエリートと民衆の神学的同床異夢は別に日本に限られたものではないような。2017/05/10
tanosyk
1
ローマ帝国におけるキリスト教をバランスのとれた叙述で位置づけている。2017/05/05
Nunokawa Takaki
0
キリストが大々的に布教されるよりは前の時代を主に論じており、特に性に対する考え方や偏見が興味深かった。2017/06/23