内容説明
干ばつに苦しむ町で発生した一家惨殺。ある理由で20年ぶりにこの地へと戻ってきた警官フォークは、事件の犯人と目されている亡き友人ルークの汚名を晴らすべく捜査をはじめる。果たして真相は? オーストラリアでベストセラーとなった、新鋭による抒情あふれるフーダニット。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
227
2018年このミス海外第7位。 オーストラリア メルボルンを舞台に 友ルークの自殺の謎を追う フォークの苦悩を 描くミステリーである。 「ルークは嘘をついた。きみも嘘をついた」 繰り返される言葉が 謎の闇を増幅させる… 過去と対峙するフォークの心象風景は トーマス・クックの世界にも似ている… 次第に明らかにされる 20年前の真実とともに 定番だが 心に残る、そんな作品だった。 2017/12/23
🐾Yoko Omoto🐾
158
大干魃に苦しむオーストラリアの田舎町に、旧友一家の凄惨な死の報を受け帰郷したフォーク。20年前の事件が元で町を追われた彼の心に去来するものは、失意に後悔、そして強い疑念だった。何年も雨が降らず乾ききった土地と渇ききった人の心、噂と嘘で真実が見えなくなり、家族関係すらも殺伐とさせてしまう狭い町の現実。そんなバックグラウンドが強い説得力を持つ事件の真相は非常に秀逸で、カットバック描写で見せる過去、交錯する人間関係、終盤の伏線回収もまた見事だった。どこの国でも、渇きに喘ぎ我を失う人間の姿は同じなのだ。秀作。2017/06/03
おか
86
初ジェイン・ハーパー そして 初オーストラリア小説。反吐の出るような犯人、そして 熱風に頭まで溶けてしまいそうな干魃にみまわれたメルボルンから離れた農場地帯 という状況で うーーーと唸りながら読了。ミステリーとしては 面白かったし 人物描写も 良く書き込まれている。狭い地域で 同じ状況下に置かれた人々の一種のヒステリー状態がより一層 故郷を捨てた主人公を追い詰めていく。ハーパーのデビュー作で 二作目も執筆中との事なので 出版されたら 読みたいと思う。2017/08/15
のぶ
85
原題の「THE DRY」のとおりオーストラリアの乾いた空気が伝わってくるようなミステリーだった。最近は暗く澱んだ北欧のミステリーを読むことが多く、この雰囲気は新鮮だった。物語は連邦警察官フォークが妻子を撃ち、自殺したとされる旧友ルークの葬儀に出るために現地を訪れる。そこでルークの両親から、息子の死の真相を突き止めてくれと頼まれる。フーダニットの作品だが、地道な犯人捜査が興味深く、このあたりの進行をとても面白く楽しんだ。新人のようだが、今後の作品に期待が持てる作家だ。2017/06/28
yukision
79
遠い昔に捨てた故郷に,友人の葬儀のため訪れた警察官フォークが,事件の真相を現地の警察官と二人で捜査する。その捜査中にも,フォークが関係したとされる過去の事件の影がちらつき,干ばつの貧しい町を背景に終始重い空気が漂う。親子関係や友人関係の描写も丁寧で,世界的なベストセラーというだけあり,読み応えのある作品だった。2022/10/13