講談社文芸文庫<br> 聖火

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講談社文芸文庫
聖火

  • ISBN:9784062903301

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内容説明

第一次大戦後の英国上流家庭。事故で半身不随となりながらも快活にふるまう長男が、ある朝、謎の死を遂げる。美しい妻、ハンサムな弟、謹厳な母、主治医、看護婦らが、真相を求めて語り合う。他殺か、自殺か。動機、方法は? 推理小説仕立ての戯曲は、人生と愛の真実を巡り急転する。二十世紀随一の物語作者が渾身の力を注ぎ、挑んだ問題劇。今なおイギリスで上演され続ける、普遍的名作。

目次

第一幕
第二幕
第三幕
解説  行方昭夫
年譜  行方昭夫

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

春ドーナツ

20
ミステリー仕立てという前情報に好奇心がくすぐられて、不慣れな戯曲を読んでみようと思う。古代ギリシア悲劇をいくつかとシェークスピアの「ハムレット」を手に取ったことがあるくらいだ。一応、初めての現代劇。サマセットさんの心理描写は奥行きが深く、時代を超越して共感したり、不安に陥ったりする。劇作でもそれは十全に発揮されていると感じた。タイトルのことを念頭に置いて、会話の中に「火」が出てくる場合は繰り返し目を通した。「聖火」というとオリンピックのそれしか思い浮かべることができないからだ。どんでん返しに心がふるえた。2020/11/30

よみこ

13
誰もが秘めた想いを抱えていて、誰もが見て見ぬふりをしてうまいこと暮らしていたのが、主人公の死によって徐々にそれが暴かれていく。決して多くない登場人物と台詞であるが、様々な愛の形から安楽死の問題まで考えさせられる厚みのある内容。母の愛は人の信念を覆し恥じ入らせるほどに強い。罪人を前に糾弾する人々に向かってイエスの言う「罪を犯したことの無いものは石を投げよ」という聖書の言葉を思い出した。2019/10/19

きりぱい

11
面白かった。寝たきりの長男の死は自殺か他殺か。ある種ミステリーのような戯曲。そこはまあ予定調和という感じでもあるので、結末よりリコンダを前にしてさらっと打ち明けるタブレット夫人に驚いた(慌てるリコンダ!)。看護婦VSステラの愛の対立も面白いけれど、「人を援助する場合、その人が希望するように援助してあげるのが一番よいと思うのです。こういうように援助されるべきだと他人が勝手に考える仕方でなく」とかタブレット夫人の台詞が色々味わい深い。 2017/05/30

ゆかっぴ

7
久しぶりの戯曲をとても楽しめました。結末を予想しながらドキドキ!母親の達観したような姿が印象的。長く生きるということの凄さを味わえました。2017/04/01

ふぁきべ

6
ちょっと読んでるだけで話の筋は見えてくるし、当然そこはポイントではない。解説・翻訳のの行方氏が言うように、ヴィクトリア朝的なお堅い時代背景(清教徒の時代からの伝統なんだろうか。現代はまた違う意味ですごいが)を考えればかなりラディカルな考え方を説くタブレット婦人はモームの代弁者であるのも何となく察しがついていたが。モームはバイセクシャルであったから常識というものを疑い、それが彼の作品(とりわけ後期)にも表れる。劇場でも見てみたいと思った。2018/08/25

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