講談社学術文庫<br> 二人であることの病い パラノイアと言語

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講談社学術文庫
二人であることの病い パラノイアと言語

  • ISBN:9784062920896

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内容説明

フロイト精神分析を構造主義的に発展させ、20世紀の思想潮流にあって、確固たる地位を占めたラカン。本書は、ラカン最初期の1930年代に発表された五篇の論考を収録。「症例エメ」「≪吹き込まれた≫手記」「パラノイア性犯罪の動機」の三篇は、症例報告の記録性があり、明澄ですらある。現代思想の巨人の哲学の出発点を探るための必読書である。

目次

訳者まえがき
症例エメ
《吹き込まれた》手記 スキゾグラフィー
パラノイア性犯罪の動機 パパン姉妹の犯罪
様式の問題 およびパラノイア性体験形式についての精神医学的考想
家族複合の病理

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ころこ

34
ホラー映画並みの描写を読むことができます。こちらは事実です。「生きたまま両の目を眼底からえぐりとり、敵を打ちのめす。ついで、手近なところにあったハンマー、湯の酒壺、包丁などをつかって、相手の体を攻撃し、顔をつぶし、さらに、陰部を露出させて、一人の腿と尻を切りつけ、その血をもう一人の腿と尻になすりつける。」『パラノイア性犯罪の動機 パパン姉妹の犯罪』から読み、後半の論文と合わせると本書の意図が何となく分かります。ふたりだけの閉じた世界の中の愛の固着がサディズムを構成する。2019/08/17

wadaya

8
幾つかの症例を元に、最終的に「家族複合」という因果関係を持ち出すが、猟奇的な犯罪のインパクトによって何か精神病の因果を象徴的に取り出す手法は危険なにおいがする。フロイトやラカンを否定するわけではないが、ドゥルーズ&ガタリが警鐘を鳴らしたことは理解できる。本書の内容は精神の病に苦しむ人に、暗に家族関係との因果を誤解させるかもしれない。これは臨床医学の一症例であることを忘れてはならないと思う。妄想は誰だってするし、それを精神病だと括る時代があったとしても、社会や時代背景によって変化するのは「歪み」だと思う。→2019/12/22

またの名

8
異常犯罪の精神鑑定を含むのでちょっとグロい。人間のカオスな愛憎の陰惨さに惹かれる人には興味深い話では。ラカン本としては特別深みがあるわけでもないがこの程度は読めてないと後の著作には辿り着けない、という意味で基準になるかも。ある若手ラカニアンによれば、妄想における社会的・象徴的な第三項の強調がすでにこの時期からなされていたのが確認できるらしい。今後の新訳・文庫化の弾みになることを願いつつ。2014/03/10

しゅん

6
ラカンの初期論集、というより症例事例の報告と付随する解釈といったところか。姉妹家政婦による殺人事件は猟奇小説かよってくらいの描写で精神医学の学びからは外れた楽しみが待ってる。ふたりであることは、鏡像段階論の前段なのかな?ちょっとよくわかってない部分多い。芸術家の病跡学みたいな話もあった記憶。2020/12/27

Z

3
「一次性の体験形式に対する本体的秩序の構造決定性」「誘因的葛藤、志向的症状..といったものは了解性の諸関係と調和しない」等、意味不明な文が出てくるが重要な本。ラカンはフロイトの生物学的な視点は軽視し生態学的な視点は受け継いだ。パラノイアは一般的な社会関係から関心を撤退させ原初的な社会関係たる家族かつそれが重要な意味を持つ幼児期の思考様式に退行すること。これにより言語障害、英雄に同一化したような妄想を形成する。これはフロイトの繰り返しだが後ろの二つの論文がそれを発展。人間は未熟な状態で生まれてくるので保護2016/02/22

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