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内容説明
■明治から戦後へ、「土地」が語る失われた歴史
■「闘う建築史家の名著!」 ―― 隈 研吾 「解説」より
「人間の歴史は、土地の上に刻まれた営みの蓄積なのだ。」
近現代史を場所という視点から探るためのキーワード「地霊(ゲニウス・ロキ)」。
土地、建築、街並みが語る声に耳を傾けるとき、
失われた記憶や物語が浮かび上がる。
国会議事堂にひそむ鎮魂のデザイン、
広島平和記念公園と厳島神社の意外な共通点、
渋沢栄一や岩崎彌太郎がゆかりの地に寄せた想い――。
優れた建築を守り伝える時代への転換をうながした建築史家の代表作。
解説 隈研吾(建築家、東京大学教授)
※本書は一九九九年一二月、講談社現代新書として刊行されたものが底本です。
■目次
はじめに ――「地霊(ゲニウス・ロキ)」とは
第一部 場所の拠り所
1 議事堂の祖霊はねむる ――伊藤博文の神戸
2 聖地創造 ――丹下健三の広島
3 本四架橋のたもとには ――耕三寺耕三の生口島
4 故郷との距離 ――渋沢栄一の王子
5 場所をうつす ――渋沢栄一の深谷
第二部 日本の〈地霊〉を見に行く
1 三菱・岩崎家の土地 ――岩崎彌太郎の湯島切通し
2 三菱・岩崎家の土地 ――岩崎小彌太の鳥居坂
3 地方の鹿鳴館
4 川の運命 ――谷崎潤一郎の神戸
5 新興住宅地のミッシング・リンク ――根津嘉一郎の常盤台
おわりに ――なぜ「場所」なのか
[コラム]
消えた丸の内
田中光顕の場所
炭鉱と鉱山・亡者の墓
日本一寒い町に来た男
解説 隈研吾
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
66
土地は物語を孕んでいる。これまでは地名や歴史ばかりがその対象と思っていたけれども、建築物もまた物語を孕んでいることに気付かされた一冊。本書は全体的に二部に分けられており、前半では建築物と場所、後半では場所が物語を持つに至った経緯を論じている。特に面白かったのは前半、国会議事堂と霊廟の関係だとか広島平和公園と厳島、生口島の耕三寺とか、読んでいてその建築物の正体が明らかにされる手口には興奮を禁じ得ない。後半も土地の持つ歴史を紐解いていく手腕は健在。土地も付喪神みたいに人の手を経ると何がしか宿るものであるな。2017/05/22
浅香山三郎
14
著者は、隈研吾氏や藤森照信氏の先輩にあたる建築史家。確かに建築史の本なのだが、土地の地霊といふものに着目した博捜ぶりで、人脈・地縁・風土をベースにした近代史の本でもある。最近でいふと竹内正浩さんの中公新書のシリーズ、古くは、山口昌男さんの一連の仕事に通じるものがある。岩崎家の屋敷を巡る考察、それに「川の運命―谷崎潤一郎と神戸―」が特に面白い。2018/03/29
はるわか
11
要するに、物事を固定的な「本質」によって捉えようとしてはいけないということなのだ。個々のケースにおいて、何がなされているかを考えるほうが、個々の真実に迫れるはずである/日本の建築のもっとも深い存在基盤はなにかといえば、それは場所に対する感覚(場所の性格と可能性、すなわち地霊ゲニウス・ロキの発見という態度)なのである。特別な意味をもつ場所を建築群によってつくり上げることこそ、日本建築のもっとも深い伝統なのである/わが国の建築伝統はまずは平面性にある。「木造の平屋の建築をつくりつづけてきた伝統」にある。2023/09/27
963papa
7
ゲニウス・ロキとは、その土地の持つ文化的・歴史的・社会的な背景であり、それを読み解くことが、そこに建つ建物に求められる個性を理解することになる。2020/03/03
misui
4
結構がっつりと建築の話だった。日本の建築伝統はその平面性にあるとして、平面的展開の延長線上に形成される水平な都市は「場所」の連なりであり、都市を読み解くことは「地霊」=「事例(ケース・ヒストリー)」の積み重ねを読むことである。2020/05/17