内容説明
終戦の年に生まれた“わたし”は九段の花街で育った。家は置屋から芸者を呼ぶ料亭「八重」。母も評判の芸者で、客として訪れた父は母と知り合い、わたしが生まれた。踊りや唄の練習に励み、幼くして芸者になることを夢見たわたしは、小学二年生のときに置屋「鶴ノ家」の子、哲治と出会う。それは不可思議な運命の糸が織り成す長い物語のはじまりだった。数奇な人生と燃え上がる情熱を描く長編。
目次
めぐり糸
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
coco夏ko10角
19
終戦の年に生まれ九段の花街で育った〈わたし〉の半生。「哲治は…わたしなのよ」というようにもう愛・恋で括れるものじゃないんだろうな。後半、徹雄は〈わたし〉がそういう人間だとわかった上で一緒にいたからまだしも雪子がなぁ…。哲治の方は昔のことで覚えてないこともあったり(もしかしたら思い出のいくつかはわたしの妄想?)、哲治から見たこの物語はどうなるのだろう。2018/04/14
Totchang
12
解説の谷崎由依はエミリー・ブロンテの嵐が丘を想起するとしていて、思わず腿を叩きました。大阪から東京に向かう列車で泣いている女性に語る老婆の一代記なのですが、その本質をよく掴めずいらいらします。「哲治はわたしだ」がストーリー全体を覆っている観念のように感じました。理屈では理解できない情動の世界を表しているようです。2020/09/02
yasumiha
5
列車の中で若い女性に、東京九段で育った「わたし」の半生を語り口調で始まる物語。運命の出会いである哲治との友情、愛情、憧れとも異なる「分身」という関係。これでもかと絡み合う「わたし」と哲治の関係が「めぐり糸」か。心のうちの描写も比喩、形容が素晴らしく、語彙文章の流れが美麗でここちよい。良き昭和の東京九段の花街の情景も興味深く、心に残る一冊。2021/02/06
逍遥遊
5
69-06-20180813 電車の中での回想録という体裁だけど、時間的に無理があるでしょ。これだけの長編を電車の中で語れないよ。結局、何が言いたかったのかな?表題の『めぐり糸』というのも今イチ。うーん、雪子は立派だけど、こんなだらしない母親を持って可哀そう。だらだらと長いだけの小説で、響かなかったです。2018/08/13
©うめい
3
主人公から読者である「あなた」に語りかける、不思議な小説。「わたし」は「哲治」のことを「友達」と評するけれど、この2人の関係はそんな言葉で表せるほど単純なものではない。「わたし」の哲治に対する執着は、正直言って理解に苦しむ。「わたし」は非常に愚かな人間だと思うが、「わたし」を動かす動力は、そんな言葉で切って捨てていいものではないような気がする。文体は美しく、話もわかる。ただもっと根本的なところで「わからない」という感覚がこの小説にはある。その「読者にわからせない部分」こそがこの小説の核なのだろうと思う。2017/04/27
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