内容説明
『絶対音感』『星新一』の著者が選んだ次なるテーマは、〈心の病〉だった――。河合隼雄の箱庭療法を試み、中井久夫から絵画療法を受け、自らもカウンセリングを学んだ。心の治療のあり方に迫り、セラピストとクライエントの関係性を読み解く。そして五年間の取材ののち、〈私〉の心もまた、病を抱えていることに気づき……。現代を生きるすべての人に響く、傑作ドキュメンタリー。文庫版特別書き下ろし「回復の先に道をつくる」を収録!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
gonta19
125
2016/10/06 Amazonより届く。 2018/1/29〜2/8 3年半ぶりの最相作品。今回は中井久夫先生を中心にセラピストの話。箱庭療法などの詳細が描かれており、非常に興味深い。個人的に存じ上げている人の名前も出てきて、ちょっとびっくりした。 もうすぐ、臨床心理士の資格から公認心理師へと資格の変更があるが、このあたりの治療の実践の場にはどのような影響が起こるのだろうか。昔と今では悩みの質が変わってしまっている、という話には恐ろしいものを感じてしまった。2018/02/08
青蓮
90
タイトルに惹かれて読みました。本書は日本の精神医学の発展と変遷を追ったノンフィクション。専門的で難しい部分もあったけれど、とても勉強になりました。私も箱庭療法をやってみたいなぁ。自分がどんな箱庭を作るのか興味があります。2017/03/08
扉のこちら側
88
2016年981冊め。うっかり小説だと思って手を出してしまったが、読み始めてみれば『絶対音感』の著者によるドキュメンタリーであった。この手の本は読んでも仕事の参考資料扱いで読メには登録していないのだが、読友さんの中に何人か関心を持たれそうな方がいらっしゃるので登録しておくことにする。内容としては精神科治療ではなく心理学的なアプローチについて。主に箱庭療法と絵画療法にページを割いている。(続)2016/11/11
kaoru
82
河合隼雄、中井久夫の箱庭療法や絵画療法を中心に日本の心理療法を描く力作。著者自らが中井久夫に絵画療法を試みるなど当事者に丁寧に迫る記述が多い。中途失明の女性が箱庭療法を試み、やがて彫刻家となったエピソードには感銘を受けた。1980年代に米国の新しい診断基準のDSM-Ⅲが日本に導入されたことで「うつ病」と診断れる事例が増えてしまったこと、臨床心理士の「DSMによって患者にされた人がたくさんいる」との発言など興味深く読んだ。自我が不安定で内省する能力が弱い若者が増え、従来の療法では効果がない例も増えたという。2023/12/15
佐島楓
69
わざわざ言葉を交わさずとも、理屈にしなくても、人には恢復する力がある。その力を根気強く信じ続けてこその治療者だということを、この本から教えていただいた。2016/10/18