内容説明
ドゥルーズになった「おれ」は『千のプラトー』第10章を書き始めた。狂気と錯乱が渦巻きながら23世紀の哲学をうみだす空前の実験。『現実宿り』を更新する異才の大傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yutaro sata
28
イメージの流れ、その飛び、みたいなものの勢いに、時折この手法の説明みたいな箇所がちょくちょく入り、私はそれを目印にして読み進めた。これは、自動筆記ではない、憑依ではない。なぜなら私が溶け、われわれに合流し、われわれがまた別のわたしのところに着き、思い出すのだから、何かがこの私の身体に憑き来った訳ではないのだ。2023/04/07
かふ
20
Amazonのレビューが参考になった。ドゥルーズ=ガタリの『千のプラトー』にインスパイアーされて、「けものになること」の言葉を書き続けること。ドゥルーズ=ガタリの縛りがあるというがなるほど、彼らが引用する作家が頻発する。シュールレアリズムの自由連想かと思うがそれに堕していたら帝国主義的になるという。けもの道という通路を言葉の連想で突き進んでいく。最後の方に携帯の番号があったがかけたらつながるのだろうか?繋がれば接続完了。2021/05/26
袖崎いたる
10
この本を読むには暑いからだが必要だった。汗が音のようにからだという楽器から鳴り出させうる環境、そして感興。世界から音が遠のいていくような。準世界から音楽が聞こえてくるような。聞こえてしまった音楽にじっとしていることなんてできなかったものだから。例えば『千のプラトー』はこれだ。あのようなこれではなくこれだ。そう言って構わない。実際、この本は速い方がいい。そして何度も読めばいい。その度に刺し違えることができることの快楽こそが本書の最大の価値かもしれないのだから。その齟齬からまた、新たな痕跡が生産されればいい。2017/07/21
hiromix0412
4
現代の作家にしては、珍しく作品から声が聞こえる作家だった 原始に立ち返り未来創出するというスタンスは、藤森壮介の影響を受けたものだろう マジックリアリズムとも違うような感じがする ぶっ壊すという建築をやっているようにも感じる 理性的に狂うということをやっているようにも感じる いずれにしても、おそれ多い書だ2018/06/19
V
3
本を開く。川がある。言葉の激流だ。しかし、そこに言葉はない。私は何かを掴もうとした。間違っている。私はこの川を下りにきたのだ。音楽に、波に乗ること。制作的身体をつくること。そう、速度。この速度だ。この身体の血液に溶けた、芋虫から、蝶になること。けものになること。生成変化。私は制作へ向かう。いや、それはもう私でないが、しかし、私でないのではないようななにか。芋虫へ戻り、再びけものになること。その幹-形而上学。あるいは、エポケーされたそれになること。《音楽みたいに生き残れ。》おれはドゥルーズだ。2018/10/28