内容説明
元イギリス空軍所属のポクスルおじさんは、イライジャ少年の憧れの存在。おじさんが語ってくれる第二次大戦の逃走劇、燃え上がる恋、そしてナチス爆撃作戦の物語に、少年は夢中になった。やがておじさんが戦争体験記を出版し、ベストセラー作家になると、少年はますます誇らしく思った。だが、おじさんは少年の前から姿を消してしまう。おじさんが去った後も、少年は体験記に没頭するが、おじさんにまつわる良からぬ噂に心をかき乱される。そしておじさんが決して語らなかった真実を知ることになる――類まれなストーリーテリング、卓抜な構成、綿密な調査によって、戦争に巻き込まれた人々の愛と喪失の物語を、いま蘇らせる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Shintaro
59
世の中にはランカスターものという本のジャンルが存在する。僕が知る限りではロバート・ウエストール『ブラッカムの爆撃機』、レン・デイトン『爆撃機』、そして本作である。ユダヤ人のポクスル・ウェストは辛くもナチスの手からロンドンに逃れ、RAFのランカスター乗りとなり、ハンブルグに爆撃行を敢行する。それが作中作『スカイロック』である。現代ではイライジャ少年がポクスルをおじさん、ユダヤ人の英雄と慕うが、おじさんは少年のもとから去ってしまう。作中作と現代が入れ子構造になって展開する。しかし、それは愛と喪失の物語だった。2017/06/18
ヘラジカ
25
たまに早川は「何故この小説を…」と感じるほど凡庸な小説を翻訳出版することがあるが、この作品もその類だと思ってしまった。惰性で最後まで読み終えたが、特に感慨が湧くということもなく、特筆するほど物語としての面白さがあるわけでもない。作中作である架空の自伝部分はどうも内省的にすぎる日本文学を読んでいるような感じがあった。「被害者であるユダヤ人」からの脱却を図ったことにこの作品の価値があるとするならば、日本人である私が理解できないのはある程度仕方ないことなのかもしれない。(2017・15)2017/03/13
あっちゃん
17
亡き祖父の知人、ポクスルおじさんを敬愛する少年とポクスルの自伝が交互に綴られていく!第二次大戦、ナチスに対したユダヤ人の英雄という話より、おじさんの私生活の方が強めのストーリー!しかも、エロ気味(笑)愛と喪失の物語とは良く言ったもので、私的には悪くはないけど…といった感じ!2017/07/26
Tadashi Totsuka
5
イライジャ少年の敬愛するポクスルおじさんは、戦争中ランカスター爆撃機の操縦士だった。この二人の現代と過去の物語です。ポクスルおじさんは戦争の話を小説に書き売れたが後に嘘がバレ少年の前から消える。おじさんは戦争中にロッテルダムの愛した人を捨てて、爆撃機の操縦士になってドイツの街を爆撃し結果的にユダヤ人の復讐をはたす。戦後捨てた愛人は、ロンドンでみつかったが結婚していて目が見えなくなっていた。もう後戻りはできなかった。flightのもう一つの意味ってなんだろう?2017/04/27
su-zu
3
父を亡くしたイライジャにとって元イギリス軍飛行士のポクスル叔父は憧れの存在。演劇や芸術に造詣が深く、様々な刺激を与えてくれる。ポクスルは自伝を出版しベストセラーになるのだが、やがて自伝にまつわるよからぬ噂が立ち、姿をかくしてしまう。読者は時代を超え二人が、自分と向き合い悩み成長していく姿を見守ることになる。虐殺を免れたユダヤ人が、大戦をいかに生き抜いたかという視点はあたらしい。しかし、一番心に残るのは、シェークスピアがイライジャにとって精神の道標のようになることだ。2018/01/01