内容説明
漱石をめぐる「謎」の数々を書いた名著が、没後百年のいま、よみがえる。
日本近代文学の巨匠でベストセラー作家、夏目漱石。
その没後、夏目家にのこされた印税覚書をもとに、一連の作品の部数を調べてみると……?
漱石愛用の万年筆をめぐる、不思議なエピソードとは?
漱石最晩年の門下生にして、漱石の長女、筆子と結婚した著者だから描くことのできた漱石の思い出、漱石山房での木曜会の様子、、そして芥川龍之介、久米正雄、鈴木三重吉、菊池寛など漱石をとりまく作家たちの素顔。
漱石関連の八篇と、「新思潮」時代の回想二篇を納めた随筆集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
187
漱石に関する随筆集で 著者は漱石最後の門下生 である。漱石 および門下生の日常が 時代背景とともに 現代に蘇って 面白い。 芥川、久米、菊池寛など 同じ若い門下生として 登場..師と弟子の関係が ひどく懐かしい。 あとがきにある 漱石の娘筆子と 久米・著者との いきさつも 当時の風景が窺えて興味深い 話だった。 2017/03/19
佐島楓
73
とても興味深い本だった。漱石の門下生で長女と結婚した著者だけあり、深みがあるエピソードがいくつも出てくる。生前の漱石の素顔、芥川との友情、菊池寛との昔話、久米正雄との確執など、目の前に血気盛んな若者だった彼らが蘇っていくかのようだった。文豪と呼ばれる人々の人間性が見られ、親近感がわくようであった。2017/04/09
かもめ通信
23
漱石に蘆花、三重吉に芥川、菊池に久米と…著名な人々が続々登場しはするが、なんと言ってもこの本で一番その才能を評価すべきは、漱石の長女筆子さんではなかろうか。彼女の人を見る目、夫を選ぶ目は確かだった?!ワイドショー的な意味だけでなく、作家論としても、人生論としてもなかなか面白かった。2017/09/11
活字スキー
19
漱石の最後の弟子にしてその没後に娘婿となった松岡譲による、在りし日の師と文学仲間達との交流の日々を綴ったエッセイ。表題の『印税帖』は資料的価値はありそうだが正直物価感覚がさっぱりピンとこなかったが、『万年筆』『贋漱石』はなかなか面白かった。芥川龍之介は早くからニヒルな才気を放っていたのだなあ。菊池寛は自分がイメージしてたのよりかなり「いいヤツ」。そして最後の『回想の久米・菊池』はなんとも「事実は小説より……」と唸らされた。漱石作品もそのうちちゃんと読もう。 2018/02/20
kaoru
8
漱石の印税に関する記述より、若き日の芥川、菊池、松岡、久米の交遊録が興味深い。松岡譲という人は漱石の長女筆子に愛されて結婚したことで仲間からの中傷に会うなど文学者としては不遇だったが、篤実な人柄の持ち主で夏目家のお婿さんにふさわしかっただろう。『漱石の万年筆』『漱石の顔』、漱石が則天去私に言及した際の記述『宗教的問答』、『二十代の芥川』、『回想の久米・菊池』が面白い。長女の半藤末利子さんの『父に代わって娘よりのあとがき』には三角関係に苦しんだ父に対する娘の深い思いが溢れている。2017/11/15