内容説明
歴史学とはどういう学問なのか、歴史研究とはどう行われるべきなのか――そのヒントは「名著」にある。本書では、日本の西洋史学に少なからぬ影響を与えてきた綺羅星のごとき名著の数々を再評価、優れた研究の手法や意義、潮流を明らかにする。研究の最前線に立つ著者ならではの考察は力強く、歴史学という知的営為の意味をあらためて考えさせられる。「歴史とは、歴史家とは何か」の問いに真正面から答える、著者渾身の一冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うえ
2
ノース他「西欧世界の勃興」の書評が収録。「十六世紀には、貿易量はどこででも拡大した。地中海では、ヴェネツィアが台頭した。とくに北ヨーロッパでの貿易量増加は著しかった。ネーデルランドの都市アントウェルペンは、十六世紀のあいだに北ヨーロッパの主要港になったが、やがてアムステルダムに取って代わられた。十六世紀の生産性についてみると、農業では低下し、手工業では一定であり、市場の取引部門では増加した。収穫逓減が支配的であり、西欧はマルサスの罠に陥り、十七世紀になると、飢饉と疫病がヨーロッパの国々を襲ったのである。」2022/11/15
oDaDa
2
前半の大塚→越智→川北の名著を通して歴史家の世代継承を鮮やかに描くその筆致は、近代欧史家らしく泰然としたものがある。視野の広い歴史家による歴史書の、精緻にして痛快な書評集。『近代世界システム』の四分冊を読むのにも骨が折れるのに、その参考文献を殆ど読むとは。2021/09/16
青色
1
たくさん名著が挙げられているのが良かった。文化史よりを専攻している自分としては、もう少し文化史にも触れてほしかったけど、著者の専門を中心としているだろうから仕方がないね。西洋史に対する熱意みたいなものがなんとなく感じられる。日本語で書く意義については、たまに私も考えることがあるので、興味深かった。2016/06/15