内容説明
『言葉の力』をテーマに高校生たちの青春模様をいきいきと描くYA小説シリーズ、二作目。付き合い始めたのに気持ちのすれ違うふたり。そして性同一性障害に苦しむ転校生。それぞれに、自分の気持ちを持て余しながらも「言葉」で想いを表現することによって、自分の内面を見つめなおしていく高3の夏。重くなりがちな内容を、作者らしい優しさと明るさで前向きに描いた意欲作です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
風眠
94
「けふもまたこころの鉦をうち鳴らしうち鳴らしつつあくがれて行く/若山牧水」ままならない心。どうにもならない心。だけどやっぱり、自分は自分のままでしか生きられない。きびしい現実も、もどかしい想いも、将来への不安も、ひとつ乗り越えたその先には、きっと自分がはまる場所がある。「あくがれ」とはきっと、ここではないどこかへ行こうとする心の力。悪態ついても、人知れず涙流しても、幸せに生きるために、今はじたばたしてもいい。「こころの鉦をうち鳴らしうち鳴らし」ながら、三十一文字にぶつけた心。若さが眩しい「うた部」第2弾。2018/04/01
みかん🍊
88
『うたうとは小さないのちひろいあげ』の続編、今回は部長となった清らと業平の二人の恋を中心にうた部の短歌甲子園出場と短歌が繰り広げられます、短歌をうたうのに恋は欠かせないですが、今回は部活に恋愛を持ち込み過ぎでこんなに部員を巻き込んでいいのかと最後は胸キュンというよりこっぱずかしくて思わず本を閉じてしまった、今作の清らにはいらっとさせられた。たまたま続けてトランスジェンダーを扱う作品を読んでしまったが普通に受け入れられる様になってくるのはいい事です。2016/09/14
のぶ
68
前作があり、その続編だと知らずにいきなり入ったので、その絡みがあればわからないが、青春にどっぷりつかった物語だった。話の中心は短歌甲子園。そこで詠まれる短歌は自分の考えている、型に嵌まったものとは全く異なっていて、戸惑ったと同時にとても面白かった。大会のスリルや岩手の観光など、短い物語中で結構盛りだくさん。部員のLGBTの問題まで踏み込んでいて、読みごたえがあった。ただ、世界が自分の年齢とあまりには慣れているために大きなギャップを感じたのも事実だった。2016/11/03
ぶんこ
56
前作の1年後、清らと業平は3年生。業平目線でのお話になってました。怪我をしてトップの水泳選手にはなれなくても、健気に水泳を続けている業平君のファンだったのですが、今回ではちょっとウジウジ君になってしまったようで、迷える君になっていたのがアレレ。今回も短歌甲子園の様子に臨場感があって面白かったです。ますます短歌愛が募ってきました。性同一性障害は、周囲に理解してくれる仲間がいる限りは大丈夫な気がする。2016/10/09
itica(アイコン変えました)
55
中田高校「うた部」第2弾。あれから1年、うた部は短歌甲子園を目指す。3年生に進級した清ら、業平の恋を中心に、進路や自身の悩みなど、青春真っ只中の彼らの31文字に込められた思いを受け止めながら「若いっていいな」としごくオバさんらしい感想を持った。中心人物の性格が好きではなかったけれど、短歌自体はじっくり詠んでその先にある本心に触れ、短歌の魅力を少しは理解したように思う。できれば1~3続けて読んだ方がうた部の面々の成長も感じられて良いかも。 2017/09/05