内容説明
発進から六世代かけ、直交星群の反物質を扱う技術をも発展させた〈孤絶〉の科学者たち。ようやく故郷の惑星を救う目処がつき、帰還の途につくことに。だが、「時の矢」の反転で航宙に危険が増すくらいなら、母星が破滅してもかまわないと主張する帰還反対派もあらわれていた。対立が激化する〈孤絶〉で、未来からのメッセージを受けとるシステムの建設計画が発表される。稼働すれば、未来の事象のすべて、〈孤絶〉と故郷の運命もわかるというが……。わたしたちとは異なる時空の法則から構築された奇妙な宇宙で、奔放にアイデアをかけめぐらせた〈直交〉三部作、堂々の完結篇!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴィオラ
9
科学技術でもなんでも、何か新しい選択肢が現れた時に、それを受け入れるか拒否するかって、簡単なようでなかなか難しい。正解は未来にしか存在しないからね。では、その正解が分かってしまったとしたら…。なかなか頭の中で描かれている事をイメージできず、3部作の中では一番手こずったかも(*_*) それでも抜群に楽しいのは、さすがイーガン!好き! ちなみに僕個人としては、どんな選択肢であれそれを選ぶのは各々の自由であるべきという姿勢。民主主義とは相性悪いのかもしれない(^_^;)2018/01/07
kurupira
7
三部作の最後だが一番読みやすかった。光陰矢の如しとなんとなく思い浮かんだが、ある意味合ってるのか?2017/03/30
kei
5
相変わらず回転物理学の発見に次ぐ発見の歴史には理解が追い付かないが、科学の発展の影には必ず長い長い個人名のリストがあり、そしてその技術の変化や発展は社会に影響を及ぼさずにいられない。イーガンは常に世界を書いてきたが、この三部作ではついに、歴史であり、科学史でもある、極めて優れたscience-fictionを作り上げた。同時代に生き、刊行を心待ちにするという楽しみ、読み耽る楽しみを得られたことに感謝したい。2017/04/04
あかつや
4
〈直交〉三部作の完結篇。母星を旅立って6世代が経過した〈孤絶〉ではいよいよ折り返しの時を迎えていたが、自分たちが帰還のリスクを負うくらいなら母星を見捨ててどこかに移住でもしようぜという一派も現れていた。未来からのメッセージを受け取るシステムの開発でえらいことになってしまう〈孤絶〉。時間が過去から未来の一方向にしか流れない我々の宇宙とは違って、この宇宙では割とすんなり飲み込める技術らしいけど、それで因果律の問題が人々を悩ませることになる。そりゃ発見の喜びなしになにか新しいものを生み出すのは無理だよなあ。2023/06/23
いたぱ
4
今この時代に生きていてよかった、と思わせる1冊。全3巻の長い長い道程も、この最終巻の最終章のためにあった。 SFを読んでいる人でまだこの3部作にチャレンジしていない人は、ぜひいつか手にとってみてほしい。文量は膨大、登場人物はかなり多く、内容は難解この上ない。しかしここには、SFにしか出来ない、そしてグレッグ・イーガンにしか作れない物語が待っている。2018/05/10