内容説明
四月の雪の日、あたしは生き返らなかった。
舞台は、東京・中目黒にある瀟洒なシェアハウス(Bハウスと名づけられている)。ここには五人の男女が住んでいる。「樅木照(もみのきひかる)はもう死んでいた」――という衝撃的な一行からこの物語は始まる。しかも死んだはずの照の意識は今もなお空中を、住人たちの頭上を、「自由に」浮遊している。五人の住人やこの家を管理する不動産屋の担当者の隠された内面が、照の死によって次第にあぶりだされていく。
《Bハウスのひとたちは自分以外みんな、不自由だと照は感じていた。あたしの死によって、気の毒なことにあのひとたちはさらに不自由になってしまったらしい。》
《みんなが照を嫉んでいたにちがいない。みんな不自由だったが、照は自由だった。俺も彼女が嫉ましかった。でも、俺は殺していない。じゃあ、誰だ?》
《あの日、あのことをはじめたのは自分だった。ただ、はじめたときに悪意があった。悪意の正体は嫉妬だった。》
著者の新境地をひらくミステリー&恋愛小説の傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちょん
25
宇野亜喜良さんの表紙が良い、物語との相性の良さよ✨井上さんだから気持ちよく終わるはずがないと思ってたら、優しい終わり方でホロり(´•ᴗ•̥`)角田さんの解説も良かった。「この人のことを好きにならなかったらもっと仲良くなれたのに」ってすごい感情だけど、的を得てる。好きになったがためにまともに付き合えないって切ない。2022/08/05
パンダプー
14
不思議な作品だけど、不条理系かと思って読み始めたのに、不条理さが気にならなくなり、すんなりと読めてしまう。 ちょっと登場人物たちみな変で、実は虫娘がまともな方だった?いや、みな変だわ。2017/03/06
REI
11
読んでいる間ずっと意味がわからなくてもやの中を進んでいくような気分だった。読み終わっても「?」という感じで、すっきりしなかったのだけれど、角田光代さんの解説を読んで、すっともやが薄らぐ感じがした。ああ、わたしは全然読解できなかった。解説を読んだ今、いつかまた読み直してみようと思えた。2017/04/21
み-しか
11
不思議ちゃんの話/不思議ちゃんの死の真相は?/シェアハウスの住人が隠している『あの夜』のこと/えっ?!あの人とあの人が実は...!2017/03/08
はるぴ@ありがたきハピネス
7
「恋愛ミステリ」という帯、どうかと思う。確かに恋愛の要素もミステリの要素もあるんだけど、それに期待するとなんか違うってことになる。だって、ウットリときめきもしないし、スカッと謎も解き明かされないんだもの。ダークだし不健全だけど、ふしぎな魅力がある本だなあと思う。自由だけど不自由な主人公に、私もひっぱられているのかも。(暗い映画館を出て現実世界に戻ってボーっとしている感じです、今。) 2017/12/24