文春新書<br> 植物はなぜ薬を作るのか

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文春新書
植物はなぜ薬を作るのか

  • 著者名:斉藤和季
  • 価格 ¥968(本体¥880)
  • 文藝春秋(2017/02発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784166611195

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内容説明

「動かない」という選択をした植物のしたたかな戦略が「薬」をもたらした!

モルヒネやキニーネ、ヤナギの成分から作ったアスピリン、生薬を用いる漢方薬など、人間は古代から植物が作る化学成分を薬として使ってきました。また、ポリフェノール、カテキン、フラボノイドなど植物由来の成分が、いまや日常用語として使われています。

しかし、つい最近まで、なぜ、どのように植物が薬を作るのかは解明されていませんでした。その根源的なメカニズムがわかってきたのは最近のことなのです。分子生物学やゲノム科学という先端的な科学の発展によって、植物の巧みな生存戦略に隠された、植物成分を作る意義と、その方法がわかってきました。

土に根を生やして移動しない、という生き方を選択をした植物は、人間も含め、共存する生命との協力関係や敵対関係のある環境のなかで、生き抜いていかねばなりません。たとえば、動物などの捕食者から身を守るため、苦味や渋み、あるいは神経を麻痺させる有毒な化学成分を作るように進化しました。こうして作り出された化学成分が人間の健康に役立つことがあるのです。

植物は、進化という厳粛な自然の審判に耐えながら、きわめて巧に設計され、洗練された方法で、多様な化学成分をつくるという機能を発達させてきました。私たち人間は、それを薬として少しだけお借りして使わせてもらっているにすぎません。

この本は、もの言わぬ植物からの伝言メッセージです。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

mae.dat

224
植物は環境に適応した精密化学工場。進化過程での前適応と同様に、欲しい物質の前駆体が重要ですね。化学合成する為には、それを促す触媒が欲しいし。その工程を何十と繰り返し様々な化合物を作り出す植物たち。設計図やプラン無しに、悠久の時間を掛け、偶発を期待し(?)、試行を繰り返して、今に至るんだなぁ。気が遠くなる。二次代謝を獲得してその植物の特異性が産まれるのですね。分子の繋がり方の違いで生理作用が変わるのも不思議です。化学面白い。もっと色々知りたくなりました( ¨̮ )。2022/06/07

kinkin

111
最後のほうに書かれていた植物は地球を汚さない精密化学工場という言葉に納得。抗がん剤や鎮痛剤をはじめ多くの薬が植物から作られていること、毒にもなれば薬にもなる成分を持ちながら植物はその毒にどう対応しているかなど興味をそそられる事が色々と書かれていた。アルカロイド、フラボノイドという言葉や漢方薬の名前は時々見聞きする。化学的構造は私には難しすぎたが読み物として面白い。未知の特効薬を持つ植物も多いと聞く。地球の環境破壊でこのような植物も絶滅すれば結局人間は人間の首を締めることになっているのだなあ。2019/12/14

yumiko

74
中医学を勉強していて改めて感じる植物の力。ちょっと専門的かな?とも思ったけれど、手に取って良かった。一言で言ってしまうと、植物という存在にただ圧倒されてしまった。題名の答えは帯にある通り。彼らは別に人間のために薬を作ってくれているわけではなく、長期間に渡る生存戦略の結果作られた成分を私たちが有難く頂戴しているだけ。話題のポリフェノールも、彼らの苦慮の産物だ。植物は「地球を汚さない緑の精密化学工場」とは納得の喩え。人類より遥かに長い間地球上に生きる植物、その戦略と能力にひたすら驚かされた一冊だった。2017/05/05

Miyoshi Hirotaka

44
移動できない植物の生存戦略は自らを化学工場にすること。太陽と土を糧にして光合成で成長し、化学物質で敵を防御し、味方を引寄せ繁殖する。薬はこの過程で生成される。人間だけでなくチンパンジーも植物を薬として使う。薬の発見は、偶然の所産の蓄積だった。近代薬学の起源は、アヘンからモルヒネを単離することに成功した19世紀。天然物から単一成分を精製することや、人工合成する研究で西洋医学が発展。一方、人体をシステムとして捉える東洋医学は、ブラックボックス的と批判され、一時後退したが、現在、医師の約9割が漢方薬を使用する。2019/01/08

樋口佳之

41
シロイヌナズナをモデル植物として、ゲノム解明の国際的研究協力が進んだ理由の一つに、シロイヌナズナが商業的価値のない植物だった点が挙げられます。各国研究者や研究費を出す各国政府は、もっぱら基礎研究としてシロイヌナズナのゲノム研究を推進し、実験データや研究材料の無償共有が可能であったことが、研究進展の大きな要因になりました。/逆に、重要な作物や商業価値のある植物の場合は、重要な遺伝子配列情報も秘匿されたり、特許で利用が制限される場合があります。/本論無関係ですが一番印象的なのここでした。2019/06/24

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