内容説明
北方領土、尖閣諸島、竹島という日本が抱える三つの「領土問題」。その解決のヒントになるのが国境学・境界研究(ボーダースタディーズ)である。欧州を揺るがす移民問題、国境防衛にとどまらないサイバー時代の安全保障、境界地域の経済振興など、国境学の応用範囲は幅広い。四千キロに及ぶ中露国境の踏破、北方領土問題への提言など最前線で活動してきた著者が、欧米の動向や自身の実践を踏まえて解説する入門書。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
48
日本は尖閣問題を領土問題と認めていない(ⅱ頁)。現代日本はいくつもの日本から構成された大きな空間(ⅶ頁)。人間とは、自分では足を踏み入れないくせに、隣人たちが入れないように空間をフェンスで囲いたがる動物なのだろうか(ⅸ頁)と疑義を呈する。政治が、日本で生じている社会や空間のなかの遠心力の高まりをとらえきれずにいるという(ⅹ頁)。ボーダーレススタディーズ(BS)は、国際法、地理学、国際関係論、政治学、経済学、人類学など人文・社会科学系の多領域にわたる学問領域(23頁)。本来、島の領有権を巡る係争が領土問題。2016/09/18
skunk_c
18
国家にしろ地方自治体にしろ、基本的に地域でものを考える場合には、その「領域」が設定され、意識されるのだが、そこには様々な曖昧さや微妙な面があることは、地理屋からすると当然。そういう意味でその境界が壁だったりゲイトウェイだったりという多面的な見方は面白かった。一方、国家間の関係に国境とかそこでの緊張感を持ち込んで考えるのはひとつの解ではあろうが、ちょっと国境にウェイトをかけ過ぎな気も。また、道東に住む知人と北方領土のロシア人との交流の様子を垣間見ると、「入門」とはいえ本書以上に多様な面があるのではないか。2017/09/30
しんこい
16
国境というとなんとなく壁を想像してしまいますが、隣国へのゲートだったり、何もなかったり、山や川であったりと様々なことが説明されます。日中関係や日韓関係の変化も国境問題との絡みで説明されると、なるほどと思うところがありました。今話題の米墨国境を出入りする人が年間3.5億人で最大とは、これも知りませんでした。2016/07/24
CTC
11
中公新書3月新刊。著者は北大教授で北方領土問のスペシャリスト。これまでの著作で、桑港平和会議での吉田茂やその後の外務省条約局長発言から、当初「択捉と得撫の間に国境があるという認識が日本側になかった」事や、故に四島一括ではなく、“面積当分”や“三島返還”といった選択肢、場合によっては歯舞・色丹だけでも、実質重要な“海”は40%戻る、といった鮮烈な視座を与えてくれた。本書でも「境界はいつでも変わる」という現実と原点をみて、現実的に境界を“砦”や“壁”ではなく、“ゲートウェイ”に近付ける方法を模索している。2016/04/21
樋口佳之
10
国境、総じて境界線を壁とするのかゲートウェイとするのか、その場に立って考えてみようとするのが国境学って理解でいいのかな。/すごく卑近な話ですが、土地の売買で測量し直すと臨家との境界線が結構ずれてて、隣の家の所有物がこちらの敷地内にずーっと置かれたままになってた事が判明する事があるのですが、それ笑い話で済む事もあるのです。/一方、境界線をめぐって隣同士で長年諍いが続く話もありますね。/どちらが住み良い環境かは明らかな話で、頭に血をのぼらせているだけじゃダメだよという主張なのかな。2017/02/27
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