内容説明
『文藝春秋』昭和49年11月号に掲載された「田中角栄研究」は、時の最高権力者・田中角栄を退陣に追い込んだ。2本のレポートはどう取材され、日本の政治と言論をどう変えたのか。歴史的記事の真相を追究した傑作ノンフィクション。解説は池上彰氏。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かわうそ
47
★★★★☆戦後最も影響力のあった首相田中角栄がなぜ倒されたのかその謎に迫ったノンフィクション作品。金権政治の権化ともいえるこの男は人間的な魅力に溢れていた。しかし、金に物を言わせるこの男はマキャベリが言ってのけたように金をばら撒いたために人に恨まれた。さらに田中角栄の言論弾圧的な行動は民主主義としてはあるまじき行動である。そこに異論を唱えたのが立花隆、児玉隆也と言った人たちであった。まさにジャーナリズムの原点はここにあると思う。政府の暴走の歯止めはジャーナリズムが担うべきである。2017/03/31
ステビア
14
二つの記事はいかにして首相を退陣に追い込んだのか?良質のルポ!2020/06/12
サイエン
0
誰それが不倫しているとかと報じている、最近の雑誌(その方が売れるのでしょうが)と違う権力に対しペンで対峙するジャーナリストの話。自分の仕事には誇りを持ちたいものですね。2017/10/20
Eiji Nanba
0
戦後政治史に一石を投じた「田中角栄内閣総辞職」には、当時の「文藝春秋」の記事が影響しているのはよく聞く話だが、この本では総辞職そのものではなく、記事ができあがるまでの間の、ライターと政治家のそれぞれの動きを生々しく描いている。この本は、もともと平成14年に出ているので、昨今の「角栄ブーム」に迎合して書かれたものではないところもいいですね。2017/01/14
みむら しんじ
0
「政治の本質とな何か」と失脚後に問われた田中角栄は「欲望の調整だ」と言い放った。残念ながらそれを本質としか認めざるを得ない世界は続いている。この本は田中角栄を失脚させた一冊の「文藝春秋」の壮絶な闘いと取材の裏側を関係者と著者の見聞により裏側を見せたドキュメントである。私もこの「田中角栄研究」を発売直後の(もちろん田中角栄失脚後)文庫本上下巻で貪るように読んだ記憶がある。近年の田中角栄へのオマージュが多いが、かの本を読んだ人間の1人としては勘弁いただきたい。そして目先の欲望調整の列島改造は続くのである。2016/12/17