内容説明
福島第一原発事故後、廃炉の見通しもなく国は「新しい安全神話」を振りかざし、避難者帰還政策を進めている。人を「数」に還元した復興や分かったつもりの国民の「不理解」がこの国をあらぬ方向へ導いている。被災者の凄惨な避難体験と、原発自治体の暮らしの赤裸々な告白を、社会学者が読み解き、対話を積み重ねて「人間のための復興」とは何かを問い直す。事故の本質を鋭く衝いた警世の書。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おさむ
44
東日本大震災から6年を迎えるのにあわせて読了。津波災害と原発事故が重なった複合災害が日本にもたらしたものは?国や東電に対する絶望的な迄の信頼の失墜、被災者とその他という国民の分断、いつ終わるのかも分からぬ避難生活。皆がわかったようでいてわからないこの問題に関し当事者を含む3人が意見をぶつけ合い、悩み、考えた結果がこの本。私たちが肝に銘じなくてはいけないのは、原発は地域社会や自治体ではなく、国家による賭けだった。負けたところから、いかに勝ち、いやイーブンに持っていくか。それが復興のありようなのだという事。2017/03/10
えむ
3
原発事故に伴う避難における様々な「不理解」を社会学者と当事者の対話を通じて明らかにしている。対話が行われてから時間が経過しており、本文中の主張も賛否両論あると思われるが、この問題について考える際には一読する価値があると思う。2017/04/01
かわくん
1
原発事故の避難について、避難者と社会学者が考えを述べ合った。その中から見えるのは、原発政策の矛盾と避難区域解除が避難者の将来への選択を狭めていく過程だ。この本が世に出てからすでに2年。原発政策は再稼働への道を走りはじめている。避難者を巡る状況はさらに厳しさを増している。この問題をどう解決していくのか、このままでいいのか、為政者に問いたい。2016/12/31
echo.
1
山下さん意識高いなあ、というのが率直な感想。政府や東電、識者が安全神話の責任をとれ、とか、公共事業じゃなくて民間の立ち上がる力を信じろ、とか、わかるんだけどじゃあ実際明日から誰が何をしたらいいのか、がいまいち見えてこない。厳しい言い方をすれば、立ち止まって頭だけでものを考えている者の論理だと感じる。お金がなければ廃炉も復興も進まないのは事実だし、福島県民全体から見てどれだけの人が事故以前原発にそんなに精神的にコミットしていたかといえば首を傾げざるを得ない。もう少し幅広く調査されたらいかがか。2016/10/21
yokkoishotaro
0
震災後10年がたって、大量死の事実や受け止め方、10年間の思いがあると思うが、政策の振り返りも重要である。廃炉、避難生活の長期化、トリチウムの問題、風評と多くの課題が山積している。先の5年10年考えるために、必要な情報が多く取り上げられていた。2021/04/14