内容説明
朝鮮における儒教の二千年にもおよぶ展開を丹念に描き出し、朝鮮近代思想史につなげる論考を展開した記念碑的大著。中国・日本と対比しながら二千年を俯瞰し、朝鮮の独自性と東アジアの普遍性を浮き彫りにする。儒学を経世実用の学とみなした潮流を確認・追跡し、そうした流れを摘み取ってしまった過程として朝鮮王朝期の党争を描き出す記述は、朝鮮のみならず東アジアにとっての<近代>を考える出発点となる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
isao_key
10
朝鮮の歴史の中で、学問の受容がどのように行われてきたか、変遷を追って書かれた力作。厚い本だが、飽きさせず読み応えがある。朝鮮での学問といえば、儒教、特に宋学、朱子学を指すことが多いが、本書では仏教や科挙などについても説明している。高麗文化を代表する者が、新羅と同じく仏教であったが、開祖たちは優れた儒者でもあった。1876年に金綺秀を正使とする修信使たちが訪日した際に、日本では文明開化を推し進めているその時期に、「我が国の学問は、500年来ただ朱子あることを知るのみ」と述べ、小中華の上に胡坐をかいていた。2016/06/28
きさらぎ
4
朝鮮には建国神話後半、紂王の叔父箕子が、武王により封じられて朝鮮を治めた、とある。朝鮮の儒者は、自国は孔子以前に「聖王の道」が伝わった「王道の国」=「小中華」であると主張したという。三国時代から新羅による統一と分裂、高麗を経て李氏朝鮮へ。高麗の仏教を重んじたが、貴族以外からの人材登用のため唐に倣い科挙を導入した。それを引き継いだ李氏朝鮮は、中国が異民族支配を受けていた元代、中華思想としての朱子学を受容するが、次第に朱子学以外の思想は陽明学・仏教・キリスト教など全て「邪学」とするまでに先鋭化する。2015/12/12
釈聴音
1
朝鮮王朝の「政治文化」を理解する上でも、朝鮮半島における儒教の受容のされかたを知ることは非常に有意義である。特に重要な点は朝鮮では陽明学がほとんど受け入れられなかったことであろう。2012/12/22
わたぼう
0
★8/102018/10/17
ELW
0
「壮元」とありますが「状元」だと思うんですが、朝鮮半島ではそうだったんでしょうか。箕子朝鮮の曰くからの 儒教の歴史。カエサルの「人は自分が見たいように見る」でしたっけ、流血の性理学者たちの権力争いは興味深かった。老論派とか懐かしい。映画『永遠なる帝国』を観ておいてよかった。2018/03/09