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内容説明
ユダヤ人として生まれ、生涯を賭してナチス体制に代表される全体主義と対峙した思想家ハンナ・アレント。その思考の源泉を、ナショナリズムや公共性の問題から検証し、『全体主義の起原』、『人間の条件』、『イェルサレムのアイヒマン』などの代表作に跡づける。その思考は、今なお全体主義的な体制を経験している私たち自身の経験と現在を考えるための重要な手掛かりになるに違いない。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さゆ
160
全体主義とは、テロルとイデオロギーを利用して人々が孤立化した後、その集まりが大衆社会となり、人間の公的で自由な言論空間が破壊されることを指すという。全体主義は、一体的な集団のイメージが強いが本質は孤立した人々の集まりだということ、大衆社会とは公的な政治参加をせず無関心で中立であることなどが興味深い。また、自己保存のための労働、広い意味での創作を仕事、それを公的に発表する活動を人間の3つの活動性とし、個と他の関係性を重視する姿勢に共感した。しかし、未だに西のポピュリズム、東の専制主義など課題は多く思われる。2024/02/18
マエダ
59
アレントのかかげる全体主義とは何かを知るために読了。2017/09/15
カザリ
31
わかりやすかったのですが、仲正氏の著書思想の死相で大分補完して理解に及びました。入門としてはすごくわかりやすく引き込まれます2019/04/04
kasim
29
とても明晰で分かりやすい。ホロコーストにはユダヤ人評議会の責任もあったことの指摘で、アレントがユダヤ人から激しい批判を受けていたことを初めて知った。私たちは被害者・加害者の問題にも「思考停止」して絶対視しがちだから、大変な勇気だと思う(これを極論して利用する輩や誤解する人もまたいるのだろうが、それは彼らの責任であって彼女の責任ではない)。また、大衆だけでなく知識人までもがナショナリズムによってたやすくナチスに流されたことへの疑問が呈せられる。集団であることの魅力の恐ろしさ。2018/08/19
呼戯人
19
中山元によるアレントの紹介は、悪の根源である無思考に焦点をあてて、「全体主義の起原」「人間の条件」「イェルサレムのアイヒマン」を中心に要領よく紹介されている。思考とは、論理的推論や仮説の構成など様々に用いられるが、複数性を前提にした人間の生からみれば、なによりも他人の立場、他人の心を思いやる想像力として規定されるというアレントの主張に深く納得した。一人の中の二人、対話的思考こそ本来の思考であるというところに人間の道徳性の根拠があるのだと思い知った。2018/06/16