内容説明
70年代、稀代の芸術家は世界を旅した。恐れと憧れを抱き続けたインド、熱く壮大なスペイン、全身が震えるほど愛するメキシコ、人生観が変わった韓国……。各国の美術と建築を独自の視点で語り尽くし、現地の人の暮らしに生身で入り込んでゆく。美の世界旅行、それは、太郎にしかできない太郎全開の旅――。長年の時を経ても驚くほど新しく瑞々しい、世界旅行の全記録! ※新潮文庫版に掲載の写真の一部は、電子版には収録しておりません。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
扉のこちら側
94
2016年665冊め。図書館で偶然見つけた一冊で、最後の著作の文庫版とのこと。世界旅行と銘打ってはいるが、太郎の好みではない古代ギリシャ・ローマやルネサンスに繋がるお国は訪ねていない。そこは後書きでそちらがお得意のヤマザキマリ氏がフォローといったところ。2016/09/01
momogaga
56
【私の理想本箱】1970年代の旅行記、内容は決して古びていない。スペイン編は心に残った。スペインを旅した時は岡本太郎が感動した美を体験したい。2017/04/14
ホークス
41
岡本太郎は創造や発見の悦び、自由な躍動を尊び、パターン化や権威を嫌う。論理よりも熱い浄化力に惹かれて読み、八方美人に色目を使う自分が恥ずかしくなる。スペインの章がとても明るく開放的だ。65才で初訪問とは驚きである。食べ物やフラメンコを無邪気に楽しむ様子が可愛い。スペインの混血的な土着文化に魅せられ、とりわけガウディへの思いは熱烈だ。「ガウディ作品の前に立つと、生命の、ナマの凄みに叫びだしたくなる」とまで言う。自分もガウディは理屈抜きに引き込まれる。ガウディ、岡本太郎、水木しげるには、何か共通点を感じる。2018/05/12
taku
28
太郎さんの感性には熱がある。生命の根源から湧き起こるもの、その熱量を感じるものが好きなのだね。訪れた土地や美についての語りが岡本太郎らしいんじゃないかと思う。触れた美術や文化、風習から命の躍動を感じ取り、その刺激に自身の魂を奮わせ創作に活かしていたのかな。おどけた顔をしているカバー写真。その両目は彼自身の宇宙に繋がっている。2017/05/27
ロビン
23
岡本太郎がインド、ネパール、ユーラシア草原、スペイン、メキシコ、ペルーなどの中南米、韓国を旅して、当地の美術品はもちろん、そこに生きる人々の衣食住や信仰を含めたなまの生活から感じ取り、思索したことを綴ったエッセイ。ガウディと太郎には、自然や生命を感じさせるその曲線美に近似性を感じていたので、太郎がガウディについて語るくだりはワクワクして読んだ。開放的で明るく生命力にあふれたスペインやメキシコと太郎は肌が合うようである。太郎は正直で真剣なので、いいものは褒め、ピンとこないものはそのままに書くのが小気味いい。2022/07/07