内容説明
没後3年、今明らかになる視聴率男の真実。
2014年1月3日、歌手でタレントのやしきたかじん氏が食道ガンで死去した。
関西を中心に活動してきたローカルタレントながら、安倍晋三総理、星野仙一元楽天監督、作詞家・秋元康など各界の著名人と交遊を持ち、死後は追悼番組や評伝も多く執筆された。
だが、『東京』をはじめ、たかじん氏の楽曲を多く手がけた作詞家・及川眠子氏が「小心者で、優しくて、気の弱いおじさん。あの人は、やしきたかじんを演じていたと思う」と評したように、その実像は知られていない。
なぜ東京進出に失敗し、その後、東京の番組出演を頑なに避け、さらには東京への番組配信すら禁じたのか。なぜ全身全霊を捧げた歌手活動を突如封印したのか。晩年、なぜ政治に接近し、橋下徹前大阪市長ら政治家を生む原動力となっていったのか――。
取材を進めるうちに見えてきたのは、一見、剛胆にみえるたかじんのあまりに一本気で繊細すぎる一面だった。本書は内なる葛藤を抱えながら、自らに求められた役割を「演じ続ける」たかじんの“心奥”を、たしかな取材で描いていく。
大反響を呼んだ単行本に、大幅加筆を加えた決定版評伝――。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あすなろ
82
歌手としてのたかじんとタレントとしてのたかじん。何方が好きか?僕は、解説の作詞家及川氏と同じく、基本的に歌手のたかじんしか興味ない。しかし、これは同じ人物である。金は増えたけど、こころは減ったと言っていたらしいたかじん。この本では、出自を伏せたことや最期は明らかにしていないが、歌手のたかじんが好きな僕には、関係がない。夜な夜な酔っ払った際に、淡々とした感情の上に自分の気持ちを載せた大阪恋物語や泣いてもいいかやあんたを歌うのみである。大阪時代の彼の曲が好きだなぁ。2017/02/11
hatayan
39
歌手やテレビ番組の解説者として活躍、2014年に逝去したやしきたかじんの評伝。 東京進出では苦杯を舐めるも、地元関西では視聴率男として揺るぎない地位を確立。晩年は橋下徹を大阪府知事に担ぎ出し、安倍首相と交友関係を築くなど政界とも近い距離に。数々の武勇伝、並外れた情熱と行動力は父親が韓国出身でコンプレックスと正面から闘っていたからではないか。一方で西成区出身であることを隠し続けたのはなぜだったかが謎として残ったとします。 没後に複数出版されたたかじんの評伝のなかでは、きわめて誠実に書かれた一冊かと思います。2019/10/03
Chuck
28
★★★★★やしきたかじん。芸能人で何故か一番好きな人。逝去の報道は、自分にとって他のどんな著名人よりも衝撃だった。没後すぐに書かれた「殉愛」という作品は直感的に読む気がせず、その作家さんの作品は未だに一作も読んでいない。でも、これは自然と手に取った。その繊細で豪快で常軌を逸した“超個性”としか言いようのないハチャメチャな人生譚。まさに関西のHERO。また、及川さんの解説が本質的で素晴らしい。黙祷。2019/02/23
gtn
27
批判の的としてきた権威が自分の番組に来てくれた途端、手のひらを返したように有難がる。理屈ではなく感情の人間であり、また、複数の知人が証言するように、臆病な人間だったのだろう。なのに彼は豪放な男を演じ続けなければならなかった。その背景には、著者が指摘するように、決して明かすことのなかったルーツがあり、それが彼に負けることを許さなかったのか。2020/10/20
きょちょ
25
やしきたかじん(本名屋鋪隆仁)は、関西以外ではどれほど有名だったのだろうか。私自身長いこと関西に住みながらも、ず~と彼をタレントと思っていたが、本業は歌手である。確かに、「やっぱ好きやねん」「東京」はヒットし、勤め人時代ある同僚は飲みに行くと必ずこの2曲を歌っていた。毒舌で我儘ではあるが、実は繊細で小心者で孤独であった。父が韓国人であることをひた隠しにしていた。政治家嫌いと言いながら、安倍や橋下を結果的に応援していたのは残念。最期の奥さんは高倉健のケースに似ていて百田尚樹の本で周りと揉めている。 ★★★2018/08/03