- ホーム
- > 電子書籍
- > 教養文庫・新書・選書
内容説明
黒部川扇状地、武蔵野台地、千葉・市原、熊本市……。三次元空間を時間とともに変化する四次元現象である地下水流動を可視化する水文学。地下水の容器としての不均質で複雑な地形と地質を解明した地下水学は、改めて環境問題に取り組む。地下水=共有財(コモンズ)を、単に資源としてではなく、文化・心理的な環境要因とみなし、自然と人間の幸福な関係を探究する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
氷柱
8
524作目。9月25日から。内容はかなり古いが比較的最近にも加筆されている。いかにも研究者が書いたという感じだが、一生懸命素人にもわかりやすくなるように屈んでくれている雰囲気も伝わってくる一作。後半の多摩地区の話から突然親近感が湧き始めた。手書きの地形図にも好感が持てる。地形の物語る歴史と、現代にも脈々と受け継がれる天然のろ過装置を通して現代が抱える課題が浮き彫りになる。地球の長い歴史からすると人類が生きているこの環境が刹那的なものであるという文言がこの作品を最も印象づけている。2019/09/28
Dolphin and Lemon
4
以前まえがきだけ読んで放置していた一冊。最近、地理学が好きな友人ができたので影響されて再開した。 久しぶりに地球科学分野のワクワクする一冊を読めた。本当に面白かった。もともと湧水(地面から水が湧き出るという不思議さと美しさ)が好きであるという素朴な興味と、自身の専門である大気海洋分野と同じ地球上の水の流れを見るという点の共通の両面から興味を持っていたが、読み進める中で地面の下の水の広がりがふんわり想像できだと思う。(続く)2024/03/04
mft
4
大雨が降ったときに増水する川の水は雨水ではなく地下水に由来するもの、という部分が印象に残った。全体として学問への入門というよりは著者の体験談を聞いていたような読後感(内容的にはそうでもないはずだけど)2017/10/27
かもすぱ
4
なんとなくブラタモリぽい本だなと思って手に取った。普段見えてる川の水はTHE水資源なんですが、それ以上の規模で地下水は存在していて、川・池から地下水になったり、地下水が染み出して川・池として現れたりしている。その染み込みとか染み出しの仕組みもこの本で解説してくれていますが、公共財として地下水への言及が面白かった。地形が地下水に作用して、地下水が人間の社会に作用して、今や人間の活動が地下水に作用する。土地と水が社会に作用する感じ、やっぱりブラタモリっぽくてよかった。2017/03/05
gauche
3
本書には東京の地下水について立川断層が大きな役目を果たしているという記述があるが、10年ほど前に立川断層は存在しないという報告が出ているので個人的に確認してみた。 まずこの報告は「立川断層」が全く存在しないということではなく、北から来た断層が立川市まで続いていないためこの名称は不適当というであり、新たな名称として「箱根ヶ崎断層」を提唱している。したがって本書で立川断層に言及していても、現在の箱根ヶ崎断層に該当する部分であれば、特に問題はないことになる。(続く) 2022/06/26