内容説明
生誕150年を迎えたアイルランドのノーベル賞詩人イェイツによる、神秘的でロマンティックな世紀末の妖精物語「赤毛のハンラハン」の初邦訳。詩集『葦間の風』より18篇を付す。
感想・レビュー
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areazione
8
まず最初は、偉大な詩人である赤毛のハンラハンが、言葉によって運命を弄ばれてしまう物語です。牧歌的かつ叙情的なお話のなかで、言葉の霊的な力を強調されております。次の詩集でも、言葉の妖しさが光ります。白昼夢のような情景のなかに、妖精や想い人や歴史が映し出されております。それらは人間の目には見えない世界のはずです。イェイツが見た薄明のなかに、彼岸と此岸の狭間があったのでしょうか。世界の果が詩われたアイリッシュな一冊です。2015/12/03
三月★うさぎ
3
図書館本。返却期限を気にして、急いで読んだので勿体無い。訳者が前面に出てきていて編著というよりは共著だ。しかし彼がイエイツの紡ぐ古いアイルランドの物語の世界へ我々を誘ってくれるのだ。吟遊詩人が詠い、フィドラーが踊る。手元に置いてゆっくり読みたくなった。でも買っちゃうと読まないんだよなぁ。2015/05/24
M
1
アイルランド版柳田国男って感じかな。巻末の詩がとてもよかった。2015/09/17
saba
0
お馴染みの栩木伸明先生の解説が熱いアイルランドもの。サンザシ、トネリコ、イチイ、ニワトコなんて木々の名の響きだけでも萌える。妖精や呪術的なケルトの土着神話要素と、十字を切り聖母に祈るキリスト教が自然に混ざりあっている表記がみてとれる。ところで赤毛のアンシリーズに時々出てくる「彼女が歩いた地面さえ崇拝する」みたいな恋の例えはケルト風だったのだろうか?なんとなく似通った雰囲気。2020/10/06
hiro
0
訳もあると思いますが、『赤毛のハンラハン物語』の現実と幻想が入り交り、猥雑で直裁で魔術的な文章の力に引き込まれ、何故かガルシア・マルケスの『エレンディラ』を読んだときの感覚を思い出しました。『葦間の風』の中の妖精達を語る詩の言葉も実に直裁で力に溢れ、言葉の力によってケルトの詩人達が古代から伝えてきた伝承文学の系譜に加わろうとする、そしてその力を再生しようとするイエイツの心意気を強く感じました。イエイツ28歳の『ケルトの薄明』 から34歳のこの本までイエイツはなんとエネルギーに溢れていたことか・・・・・2018/11/23