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内容説明
松平定信と経済官僚たちの所得再分配のためのプロジェクト! 幕府も武家も商人もWin-Winの関係だった!? 借金棒引き、貨幣改鋳に込められた真の狙い? 支配-被支配という旧来の歴史認識ではわからない江戸時代の実像に迫る興奮の一冊。
目次
はじめに
第一章 お江戸の富の再分配
第二章 改革者たち
第三章 お江戸の小判ゲーム
終 章 日本を救った米相場
本書がお世話になった資料集
おわりに
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mitei
97
江戸時代の政治家のやりとりが今の時代でもやりとりが同じような雰囲気で読みやすかった。意外に松平定信が経済に関して自由主義的な立場を取りつつ、商人にも配慮しつつ動いていたのが驚いた。江戸時代って最も日本らしさが育った時代なのかなとおもった。2013/09/06
saga
31
歴史学者がゲーム理論に出会った結果、享保、寛政、天保の三大改革がおよそ50年に一度行われた借金棒引き令を、こんなにも面白く見ることができる本が生まれた。貨幣を改鋳する幕府。幕府が利益を得んがための施策と誤解されていたが、小判の退蔵をさせないため崇高な思いがあったことに感動すら覚える。金銀について「この世上の宝を、一己の私として占用し、こっそり隠し置くなんて心得違い」の一文に賛同。金は天下の回りものなのだ。もっとも銀行業のなかった江戸の話ではあるが……2013/10/25
小鈴
29
めちゃくちゃ面白かった。江戸の金融政策、経済政策を鮮やかに描く。今のように経済学としての理論が成立しているわけではない。その中で勘定奉行ら経済官僚が提案し、調査し、議論を重ね、実施、改善を重ねる。そうまでして努力するのは市場を機能させるためマネー流通をスムーズにするため。50年に一度の棄捐令は富の再分配。町会所は社会保険だ。第二章のチーム定信はまるでプロジェクトXだ。池井戸潤で小説にしてほしい。2017/10/22
禿童子
22
江戸時代の50年ごとの借金棒引とたびたびの貨幣改鋳の背景には、武家の借金が孫の代に残らないようにし、商人に死蔵される小判を廃止して新しい貨幣に交換させることで世の中の景気と流動性を維持する知恵があった?幕府の経済政策は単なる支配・被支配のタテの力学ではなく武家と商人の間のフラットなゲーム理論が働いていたと見る視点は斬新に感じた。堂島の米相場が幕末に10倍の高騰を起こした経緯の推理と相場急落後の顛末も面白かった。前近代には前近代なりの合理性があることがわかる。2017/10/11
なにょう
19
難しかった。後半は理解が追いつかなかった。が、なんとなく思うのは「金は天下のまわりもの」。★今は銀行にお金を預金すれば銀行がそのお金を融資に回すからお金の循環がある。江戸時代は銀行は無い。御公儀は市中にお金を引き出したい。商家は自家にお金を貯め込みたい。はたまたお武家は先祖代々借金で首が回らない。さてどうする。五十年ごとの借金の棒引き。はたまた貨幣の改鋳。お上と下々の……まさに上に政策あれば下に対策あり。★著者は更に一歩理論を進める。上下ではなく御公儀、武家、商人を対等な存在とみなす。そこが新鮮だった。2020/03/19