内容説明
一九三八年十月一日、外務書記生棚倉慎はワルシャワの在ポーランド日本大使館に着任した。ロシア人の父を持つ彼には、ロシア革命の被害者で、シベリアで保護され来日したポーランド人孤児の一人カミルとの思い出があった。先の大戦から僅か二十年、世界が平和を渇望する中、ヒトラー率いるナチス・ドイツは周辺国への野心を露わにし始め、緊張が高まっていた。慎は祖国に帰った孤児たちが作った極東青年会と協力し戦争回避に向け奔走、やがてアメリカ人記者レイと知り合う。だが、遂にドイツがポーランドに侵攻、戦争が勃発すると、慎は「一人の人間として」生きる決意を固めてゆく。“世界を覆うまやかしに惑わされることなく、常に真実と共にあれ”との言葉を胸に。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
606
在外公館書記生の慎、アメリカ国籍のジャーナリストのレイ、そしてポーランド国籍のカメラマンのヤン。物語はこの3人を軸に紡がれてゆくが、彼らは共にこの時代にあっては破格のコスモポリタンである。そのことは、この3人が出自において、そしてその生い立ちにおいてそれぞれ3様に L'Étrangerであったことと無関係ではないだろう。彼らが邂逅するのは、ナチスに蹂躙される激動のワルシャワであった。まさにその地で彼らは自らが生きる意味を賭けて、それぞれの生を燃焼させた。後には彼らが確かに生きた軌跡だけが光芒を残した。2021/08/19
遥かなる想い
441
第二次世界大戦勃発時のポーランドを 舞台にした物語である。外務書記生棚倉慎の 視点で 激動のポーランドを描く。 ドイツとソ連に挟まれた国 ポーランドを 軸に ユダヤとナチ、そして日本の当時の 感情が 残酷に読者に伝わる..それにしても 日本人にはわかりにくい 略奪の国 ポーランドの歴史が 哀しみが 見事に現代に蘇る..貴重な物語だった。2017/02/22
starbro
434
5月の1作目です。直木賞候補になってから図書館に予約したので、ようやく読めました。須賀しのぶ、初読です。またポーランドを舞台にした小説もお初めてです。周辺の強国に蹂躙され続けた歴史を持つポーランドにおける感動の物語、脳内BGMショパンで500P弱一気読みしました。直木賞候補だけあって、骨太の佳作です。いつかポーランドに行ってみたいですが、愚かな人類の最大の負の遺産の一つであるアウシュヴィッツを直視できるでしょうか?2017/05/01
zero1
325
ポーランドを舞台にしたスケールの大きな作品。友情に泣ける!主人公はロシア人を父に持つ棚倉慎。日本でポーランド孤児と出会った彼は、ワルシャワの大使館書記生となる。大戦勃発でドイツ軍が侵攻。ホロコースト、カティンの森、ワルシャワ蜂起など歴史の予備知識があるといい。私は362ページで明かされる秘密を予想できなかった。慎が気に入らない米国人記者やイエジとマジェナなど登場人物はよく描けている。直木賞は落選(恩田陸「蜜蜂と遠雷」が受賞)だが高校生直木賞に選ばれた。約500ページと長いが読む価値あり!の一冊。2018/11/01
アン子
281
アウシュヴィッツ・ビルケナウ記念博物館でガイドの方に14歳以下の見学は推奨していないと言われた時は展示物の刺激が強いからとしか思わなかった。でもきっとポーランド人にとっては「怖い・かわいそう」だけでは無く、その時何があったのかを正しく理解して欲しいと言う思いもあるのだろう。2020/11/22
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