内容説明
戦争の傷痕がいまだに疼き、おどおどと人生を送っている父親と、そんな父親に反抗する戦争を知らぬ世代の息子。誤解と断絶から生まれる様々なトラブルを通して人間らしさの真実を追求した、ペーソスあふれる長篇小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Gotoran
37
1966年6月~1967年5月に読売新聞夕刊に連載され、1967年に出版されたと云う本作品。戦争の傷跡をかかえる父親・向坂善作と父に反発する戦争を知らない世代の息子・廉二との間の誤解と断絶によって生じたトラブルを通じて、父親の戦争の重く古い青春と息子の青春が描かれている。昭和の古い話ではあったが、狐狸庵先生調のポップな文体で非常に読み易く、読後感も悪くなかった。2025/05/18
べらし
0
小林正樹『日本の青春』原作。『江分利満氏の優雅な生活』と対になる作品だと思う(こっちの方が俗っぽいが)。この主人公の苦悩は戦中派の人々のみならず日本社会において普遍的なものだろう。ただ、もし今この物語を作るとなったら終わり方は変えないとまずい。なぜなら、今の日本でこの作品の中で触れられる「小市民的幸福」に身を委ねることは一種の暴力に加担することだからだ…2017/09/25