内容説明
1993年、46歳の若さで、戦後生まれ初の米国大統領に就任したビル・クリントン。2期8年の任期中、民主党政権ながら福祉削減を厭わず中道主義を追求。財政と貿易の「双子の赤字」を解決し好況に導く。また国際紛争解決に積極的に関与し、冷戦後の新たな国家関係を模索。米国を繁栄に導いた。本書は、次々とカネとセックスのスキャンダルにまみれ、弾劾裁判を受けながらも、多くの実績を残し、今なお絶大な人気を誇る彼の半生を追う。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かごむし
29
アメリカの政治についてほとんど知識も関心もなかったけれど、丁寧に背景や制度など、基本的な説明を踏まえながら語られるクリントンの姿には、説得力があって面白かった。国民に流されてくる情報から見える大統領と、実際の業務としての大統領の姿にギャップを感じ、報道など賢く見ていかないといけないなと改めて思った。モニカルインスキーとの醜聞の印象が強いが、イデオロギーによらず必要な政策を遂行していったクリントンを筆者は高く評価している。クリントンという大統領個人に限らず、アメリカの政治というものが見える名著であると思う。2016/07/30
funuu
14
「美しいものを見たけれは目を瞑れ」保守派の論客ベネットによれば、人は自らの行為について判断する責任を負う。誤った行為を取った個人はその行為から生じる責任を負わねばならない。だが、クリントンは目に余る不貞行為を働きつつも、その結果生じた責任から言葉巧みに逃げまわるばかりだと憤る。さらに、アメリカ国民がクリントンの行為が不道徳であることを認識しつつも、彼の政治手腕や経済的実績を尊重するあまり倫理的責任をあえて問わないということであれば、アメリカが公共の問題に関する理知的判断を失って無責任化し、根本から病んでい2016/10/02
浅香山三郎
13
中公新書の政治史、政治学、政治家の評伝の堅実さは、本書にもよく表れてゐる。ビル・クリントンの政治―リベラルから「第三の道」への転換―を論じ、アメリカと世界にとつての意義付けを図る。クリントンの政治が、民主党の中道化といふ戦略により断行されたことのメリットとデメリット、功と罪を示すと共に、今のやうな二極化の時代の閉塞から、地道な妥協と根気のせめぎ会う手法への転換を模索する上でも有益。クリントンのスタンスの柔軟さには学ぶべきところが多いのではないかと思ふ。2018/02/12
あんころもち
10
中東和平、ジャパンバッシング、NAFTA、犯罪対策、福祉削減…とクリントンの中道路線をある程度網羅しており、少なくともクリントンを良かれ悪かれ見直す一冊にはなるであろう。そして、それらは驚くほどに現在2016年へとつながる政策であり、大統領選と相まってそれへの評価/批判が沸き起こっている。今回この本は、クリントン政権時代のみならず、2016年現在に影響を与えた部分からクリントン政権の評価を試みている。しかし、この観点においては分量上甚だ不十分なものとなっている。2016/07/25
もくもく
7
あえて今だから「ビル・クリントン」を読む…当然、そういう読者を狙っての出版でしょうね。 ビル・クリントンと言うと、どうしてもその「不適切なスキャンダル」の記憶ばかりが強烈ですけど、その在任中の仕事を改めて評価すると、現在のアメリカに繋がる幾つもの重要な決断をしていたことがわかる…というような一冊でした。 それにしても、大統領就任時の年齢が46歳って、オバマの就任時(47歳)よりも若かったんですね。 そして、次がヒラリーになってもトランプになっても、米国大統領は一気に高齢化するんだなぁ…。(^_^)2016/10/07