内容説明
アラバマ州メイコムに帰省したジーン・ルイーズは、生まれ育った町と愛する家族の苦い事実を知るのだった。全米を大論争に巻き込んだ、アメリカ文学の最高傑作『アラバマ物語』著者の未発表長篇
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
スイ
11
「偏見というと汚い言葉だし、信仰というときれいな言葉だが、これらには共通点がある。どちらも理性が終わったところで始まるんだよ」 「アラバマ物語」の続編。 「アラバマ物語」を読んだのは数年前で、黒人差別との戦いを描いており、良い小説だとは思うものの、結局虐げられた黒人達は「善き白人男性」の引き立て役じゃない?という気持ちが拭えなかったし、今もアメリカで愛されているというのも、もちろん差別を許さないというところが大きいのだろうけど、読み手はいい気分になれるよね…とも思った(私が最も優れていると思うのは、2017/03/11
椿 釦
10
アラバマ物語の続編。アラバマ物語から20年後、1950年代後半、公民権運動が始まった時代の南部の話。かつて黒人の無実のために戦った弁護士の父親が白人至上主義の集会に出席しているのを見て父親を尊敬していた主人公はショックを受ける。ここで語られる南部の白人の考えは(リベラルに見える主人公の意見も含めて)とても生々しい。劣った人種に自分達の社会に入ってきて欲しくないと本気で本当に思っている人々。この世界を生きてきたアメリカ黒人の歴史の壮絶さに言葉を失う。続く2020/08/16
garth
7
南部の人々は以前とまったく変わらなかったーーある意味では、恐ろしいくらいにますます南部人的になった……悲惨なほど貧しい地域が生まれ、そこから最も醜くはずべき側面が現れ出たーー解放された黒人たちと経済的に競い合わなければならない白人という種族だよ」2017/02/19
Mana
5
アラバマ物語の20年後。ただし、執筆時期はこっちの方が先。翻訳者が違うので微妙に違和感が。おばさんも姉から妹に変わってた。前評判が芳しくなかったけど、思ったより悪くなかった。アティカスが人種差別主義者になってしまってたのは確かにショックだけど、アラバマ物語の時点から、黒人は白人より劣るから守ってあげなくちゃいけないとか、押し付けがましさの片鱗はあった気がする。確かに初期の作品なので、ストーリー的に未熟な面も感じるけど、全体的にそれほど悪くない。ただ、最後の主人公の選択は残念だった。2016/12/30
takeakisky
4
アラバマ物語のアウトテイクを寄せ集めた本だと思ったら大間違いだし、そこらの書評に怖気づいて読まないと大損です。でところどころに顔を出す過去のエピソードに切なくなったり、大笑いしたり、というのも楽しいところだが、そこじゃない。後半のジーンルイーズとドクターフィンチ、そして彼女とアティカスの議論は全く読み応えがある。モッキンバードはいい本だったけれど、この本は重要な本になるかもしれない。これからはセットで読まれるべき。原稿が見つかってよかった。2022/03/07