内容説明
絶世の美貌と才気を兼ね備え、頽廃美で人気を博した稀代の女形、三代目澤村田之助。脱疽で四肢を失いながらも、近代化する劇界で江戸歌舞伎最後の花を咲かせた役者の芸と生涯を描く代表作、待望の復刊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
buchipanda3
116
妖艶な魅力を放っていたとされる女形・澤村田之助の生涯を描いた小説。役者として才気を発揮していた最中、病により四肢を失うという悲運、それでも彼は舞台に立ち続けたという。歌舞伎の舞台の煌びやかさと対比するかのように語り手・三すじの口調は淡々としている。それがむしろ写実的な効果を高めて、読み手に不穏な緊張感がもたらされ続けた。その三すじは自分でも判別できない屈折した感情を抱えてしまう。妬みからの憎悪が思わず沸き起こるも執念と凄艶さに愛しみを持たずにおれない存在。それが田之太夫の姿であることが深く印象付けられた。2020/10/26
KAZOO
102
皆川さんの海外ものが結構お気に入りでしたが、この本も楽しませてくれました。私は澤村田之助については大好きな北森鴻さんの「狂乱二十四孝」が大好きで何度も読んでいるので理解しているのですが、今回はその人物がよくわかるような感じがしました。年上のそばにいる三すじという人物が語りてとなり、さらに絵師で有名な月岡芳年が出てくるのも楽しめました。2026/04/15
aquamarine
74
実在の名女形、三代目澤村田之助。脱疽で四肢を失いながらも舞台に立ち続けた彼の生きざまが、幼少期から見つめ、のちには弟子として傍らから離れなかった三すじの視点で語られます。文字の間に芝居の艶やかな仕草がひらりひらりと見えてくる言葉の選びの見事なこと。一緒に舞台を楽しみながら三すじとなって田之助に寄り添い、後半は一緒に痛みを感じながら壮絶な人生を見届けました。一見必要のなさそうなプロローグとエピローグが読後とても響いてきて、皆川さんらしくてとても好きです。まさしく花と闇、皆川さんだからこその一冊だと思います。2017/11/18
のり
68
江戸末期に女形として実力・人気を誇った三代目「澤村田之助」と弟子として影となり支えた「市川三すじ」。幼少期から天才肌だったが、気性が荒く口も悪い。しかし芸に対しては真摯に向き合い研鑽を積んだ。後の九代目「市川團十郎」に対して大根呼ばわり。しかし一目置く存在でもあった。田之助は尊敬もされたが、敵も多かっただろう。破天荒の報いではないが奇病に罹り四肢が…それでも懸命に舞台に立ち続けたが、まさかの終焉を迎える事に。上に立つ人はこの位個性が際立ってないと努まらない世界なのか?2021/02/13
佐島楓
56
おそろしいと思われるものほど、うつくしい。そんな種類の美を描くのが皆川先生の本領なのだと思う。2016/12/09




