内容説明
京都・祇王寺の庵主として静かに暮す智蓮尼は、12歳で花柳界に売られ、愛のあかしに小指を切ってみせるほどの激しい気性をもっていた。赤坂の“千竜”としてその艶名をうたわれ、男とのことで数度にわたって新聞を騒がせたのち40歳で得度したのだった……。すさまじいまでの女の宿業をにないながら、本能のままに生命を燃焼させた女の波乱の半生を、大胆なタッチで描いた長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
49
凄まじい女の宿業を担いながらも、本能のままに生命を燃やす女性の波乱の生涯に引き込まれました。大胆で激しい世界と激しい気性の生き様は本能のままだと言えるでしょう。2021/05/23
かつおさん
25
初の寂聴作品。ある京都関係の本で祇王寺の智照のことを知り是非とも読んでみたかった本。多少、創作はあるにせよ殆どが実話に基づく話なんだろうね。あれだけ次から次へと今で言うセレブの男たちが夢中になった女徳ってどんなだったのか。和三郎のような人はそうはいないと思うけど、その一途さに胸が熱くなった。得度を得る儀式のシーンもたみや和三郎の積年の想いまでもが胸に浮かぶようでした。京にまつわること特に嵯峨野、平家にまつわる話や当時の色街事情などもとても興味深く読めました。📚秀作!2020/05/16
エドワード
17
東京で着物のデザインを手掛ける亮子。現代を懸命に生きる彼女が、大勢の男性に囲まれている喧騒の中で、京都・嵯峨の智蓮尼の庵を訪ね、智蓮尼ことたみのこの上なく激動の人生に触れ、我が人生に想いをはせる、という容れ子構造だ。奈良の貧しい家で生まれ、売られて舞妓となり、大阪、東京、ニューヨーク、パリと巡り、映画に出演、バーを経営、数多くの男性遍歴を重ねるたみ。バイタリティ即ち煩悩の塊である。たみは最後に尼となるが、傍らにかしずく和三郎が見事なかくし味だ。物語の通奏低音に平家物語が流れており、諸行無常の響きがある。2018/04/14
まる
6
ヒロインは2人の形で、殆どがたみが語る過去だが、語っているにしては第三者の文章で綴られている為、彼方の人の動きに感じられてしまい入り込めず残念な一方、京都の描写はとても美しく流石と思った。しかし、あれを「女徳」と言うのか。「徳」とは人が敬い慕う事であるなら、確かに男達はたみに惹きつけられて行く。「徳」ではなく「得」なら納得するが。和三郎があれ程にする神聖さもたみからは感じられない。語っているはずの言葉がなくて、第三者の文章なのなら、聞き手としての亮子の役割は何なのかと思われた。2024/01/16
こけこ
3
1968年版を読んだ。まさに力作!智蓮尼にはモデルがいるのは、読み終わってから知った。人間の孤独、金などの煩悩、苦しみを感じた。これらから私たちは、逃れることができないのだろうか。2025/01/08
-
- 電子書籍
- Pen+(ペン・プラス) 恵比寿の街か…
-
- 電子書籍
- 異世界返済 4
-
- 電子書籍
- true tears 小説版 第4話 …
-
- 電子書籍
- カルラ舞う! ~外伝 安倍晴明編~ 1…
-
- 電子書籍
- 大橋鎭子と花森安治 戦後日本の「くらし…