内容説明
八八の寺院を巡る四国遍路の姿を決定づけた、ある僧の案内記。貧困、病気、差別に苦しめられた巡礼者たちの記録。評判を呼んだ新聞記者による遍路道中記。バスや鉄道の登場がもたらした遍路道の変革――。本書では、近世以降の史料を博捜し、伝説と史実がないまぜになった四国遍路の実態を再現する。千数百キロの遍路道を歩く巡礼者と、彼らと相対した地域住民。これまで語られてこなかった彼らの実像に光を当てる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
つちのこ
45
昨年、仏心もないまま深く考えることなく歩き遍路をした。南無大師遍照金剛を唱え、般若心経を読む毎日を過ごすうちに、心が妙に落ちついていくことを肌で感じた。あれは錯覚だったのかと思ってみたりもする。遍路は、自分を変えたいという願望を実現するための行為なのだろうか。起源や創設者も、宗教的な意義も分からず、弘法大師信仰に基づいていることさえ曖昧である。本書を読んでもその答えは出ないが、四国遍路が年月をかけて今のスタイルになってきたことは確かなようだ。形式に振り回されず、それぞれの捉え方で遍路に立ち向かうのがいい。2024/12/07
ニコン
24
新聞記事や雑誌の記事までも集め、四国遍路の歴史などがよく解ります。明治時代には、新聞の連載で二人の記者がそれぞれ逆回りをしてどこで会うかの競争もあったなど興味深い話も。読みやすい本です。2015/03/08
yamahiko
22
ずっと抱きつづけていた四国巡礼に対する過剰な幻想を打ち砕いてくれたました。そのうえで、いつかは自分なりに歩いてみたいと思わせてくれた一冊でした。2018/08/20
ようはん
16
四国遍路も今だと一種のレジャー化はしてはいるものの、かつてはハンセン病の患者が巡礼していた事や行き倒れの巡礼者等を巡る地元のゴタゴタの下りは闇が深い。2023/09/17
遊々亭おさる
14
ハンセン病を患い、棄民となった親子が白装束に身を包み荒涼たる道を肩を寄せあいながら歩く…。松本清張『砂の器』の巡礼者のイメージと宗派やルールを問わない緩やかな巡礼やギブアンドテイクの関係のお接待など日本的な宗教感が詰まっているような四国遍路の裏と表、そしてその変容を纏めた一冊。祈り・観光・国家による政治利用…。時代により万華鏡のように様々な顔を見せる四国遍路。『砂の器』のあの男は何を思い、何を祈りながら帰るあてのない旅を続けていたのだろうか。世界遺産を目指す四国遍路は開創1200年を迎えたと言われる。2015/10/17