内容説明
いじめを受ける5年生のぼくは、未来のぼくへ手紙を出す。中学1年から32歳まで20年間分。1年ごとの明るい目標を書いた手紙は、毎年ぼくの元へ届けられた。そして33歳になったある日、来るはずのない「未来の手紙」が届く。それは、悪夢の手紙だった……。(表題作) 確実に何かが変わってしまう10代前半の少年少女。その不安と期待を等身大で描く珠玉の短編集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
chimako
89
一番好きだったのは「月島さんちのフミちゃん」両親を亡くして双子の兄妹に育てられる中学生のフミちゃんの話。この双子の兄妹が良い。妹を愛し、自分自身も愛すカンちゃんと瑛子ちゃん。屈託がないわけではない。二人が抱えるものがフミちゃんを大人にしていく。……収録されている六つの短編は子どもたちや大人になりかけた青年や大人自身が何気ない毎日のなかで遭遇する幸せや痛みが易しい言葉で書かれている。ヤングアダルト向けだけれど読んでいて、なるほどなと感心することがいくつもあった。2017/08/02
takaC
66
直前に読んでた西川麻子と比べると1行の文字が2文字少なく1ページの行数が1行少ない。その前に読んでたほたる食堂との比較だと-3文字/行&-3行/頁の37文字x16行なのでやけにサクサクと読み進められた感じがする。光文社文庫ってどれでもこんなでしたっけ?2017/11/01
NADIA
50
椰月さん2冊目。小中学生の目線で語られる6編の短編集。不思議要素が入り込む作品もあるが、ごく普通の生活が描かれているものが多い。殺人だの誘拐だの異次元旅行だのの特別なことが起こらなくても十分に面白い。「雨を含んだ制服の匂い」の一節だけで中学生まで遡れる。というわけで表題作よりも、クラスメートよりも一足先に推薦入学を決めて居心地の悪さを感じながら、引退した生物部に顔出しをする女子中学生が語る『イモリのしっぽ』が一番気に入った。ちょうど今の季節にピッタリだし。2020/01/29
ピロ麻呂
38
心温まる~短編集☆6編のうち3編は既読。特にお気に入りは「しいちゃん」「月島さんちのフミちゃん」 こんな楽しい家族いいよなぁ(^^) それぞれの短編の続きが読みたくなりました(^o^) 2016/11/24
future4227
35
10代の子どもたちを主人公とする心温まる短編集。特にこれといって大事件が起きるわけでもなく、でも子どもたちにとっては大事なことで、そんな日常のあるある的な光景が、椰月さんの手にかかるとなぜか心にジーンとくる物語に変貌する。でも今回はちょっと現実離れした設定が入っているのが、いつもの椰月さんと違う所。小人が出てきたり、ホルマリン漬けの生物サンプルに魅入られる女子中学生が出てきたり、一番笑えるのはイケメンの兄が実はオネエだったりとか。無理にオチを作らない読後の余韻が好きです。2017/01/26