内容説明
闊達自在、卓抜典雅な文章で貫ぬかれた揺るぎない批評眼、飛翔する想像力。世相を鋭く風刺し、幻想的世界と現実とが交錯する石川文学中期作品群7篇。──かつて東北の鄙びた温泉場で、俄に腹痛におそわれた〈わたし〉が、土地に伝わる丸薬でそれを治した話に始まる「霊薬十二神丹」ほか、「落花」「近松」「今はむかし」「蜃気楼」「かくしごと」「狐の生肝」を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
恋愛爆弾
18
「今はむかし」で新粟汁粉のにおいによって分裂したような小説家と学者、「近松」における「この世にも暗がりもあるということじゃよ。」、「かくしごと」における「さんたまりあ。」及び〈後人の附会か〉、「霊薬十二神丹」における〈そして、口碑は山城の死のことを語らない。その語らざるかぎりに於て、山城はすなわち不死の道をえたことになる〉、これらの論理に私のような読者はかならず面食らう。その「錯覚」ならびに「虚妄」の「おさきまっくら」に耐えることができないからであり、なんで耐えなきゃいけないかもよくわからないままである。2021/11/10
AR読書記録
3
このなかでは「落花」がかなり異質。乱歩的でもあり、安部公房もちょと感じたりして、わたしのなかの「石川淳ってこんなの書くひと」というイメージがなかなか固まらぬ。いろいろつめこんであるがいかんせん短いので、えらく説明的でもあり、登場人物もその性質を自然に発揮していくという展開でもなく。読みおわって「...?」となっていたが、そのあと、歴史もの、口承ものになっていくと、石川淳のひとつの柱として納得いく内容。しかし、作品を読むとともに、作家研究のようなものも読まねば、ちゃんと読んだことになりそうにないなー。2014/10/30
gkmond
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「かくしごと」と「狐の生肝」が面白かった。2013/08/06