内容説明
深い怒りと悲しみに培われて女の内部に居据わる〈業〉を凄絶に描いた「ひもじい月日」(女流文学者賞受賞)、『春雨物語』を踏まえた鬼気迫る傑作「二世の縁 拾遺」、夢幻と現実が見事に融合する「花食い姥」、ほかに「黝い紫陽花」「妖」「猫の草子」「川波抄」を収録。伝統的優美と豊かな知性が研きあげた隠微な官能、妖気を漂わせる特異の世界、円地文子傑作短篇集・7篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
33
母親としての女、妻としての女、そして個人としての女が衝突し、ぎりぎりのバランスが崩れる描写の凄味に呆然とする短篇集。「黒い紫陽花」の理解と自由があることを尊重しながら息子の意志を汲み取れなかった母親としての偽善とエゴ、精神を病んでしまった息子を見捨てられない執着と息子の自死に何もかもが切れてしまった状況に移ろう様は怖くても曳きこまれるものがあります。春雨物語を根底に置いた「二世の縁 拾遺」は見知らぬ男に乱暴されそうになって夫の特徴があると感知しても否定し、入定の定助はどの男にも存在する奇妙な怖さが癖になる2013/03/27
軍縮地球市民shinshin
13
短編集。読むのに時間がかかってしまった。「くろい紫陽花」と「川波抄」そして代表作「ひもじい月日」がよかった。死の前年に文化勲章まで受章しているのだが、今日知られていない作家になってしまった。読めばわかるが、どうも主人公の女性が自立していないのだ。満たされていない生活を夫や周りのせいにしていて自分を省みていない。そこが現代では古くなってしまったのだろうなぁ。2023/05/29
夏子
10
女性の心の奥底にある激しいどろどろとした物を凄く的確に冷静に描いている怖い作品集です。決して楽しい話ではないのですが読むのをやめられない魅力がありました。2015/12/16
Kotaro Nagai
9
円地文子といえば、源氏物語の現代語訳を手がけた人としか知らないレベル。初めて読みます。昭和28年から50年までの短編7編を収録。全体的に暗い色調の作品だが、中年から老境にさしかかった女性の心理の描写が巧み。「妖」での入れ歯に関する描写、「二世の縁 拾遺」での上田秋成の「春雨物語」を絡めた恩師との交情の描写など傑出した作品と感じる。著者の幼少時の思い出を綴った「川波抄」は、古き良き江戸情緒と著者の心情を描写した文章が瑞々しく素晴らしい。2022/08/30
ヒラオカキミ茸
9
前知識から、この本を読んだ後は晩年乞食になった小野小町を描いた月岡芳年「月百姿 卒塔婆の月」がイメージされるのだろうなと思っていた。でも間違っていた。どちらかというと松井冬子が描く、微笑みながら自身の臓器を見せびらかす女が想起された。内臓は体からこぼれ出て自身の意志の及ぶところではなくなったけれど、死の間際の輝きが逆説的に美を強烈に知覚させる。本人もそれを分っていて、だから、見て。と言っているような気がした。2013/11/24
-
- 電子書籍
- 悪役令嬢ですが健康なので幸せです【タテ…
-
- DVD
- ボディ・ダブル




