講談社文芸文庫<br> 万延元年のフットボール

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講談社文芸文庫
万延元年のフットボール

  • 著者名:大江健三郎【著】
  • 価格 ¥1,716(本体¥1,560)
  • 講談社(2017/01発売)
  • ポイント 15pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784061960145

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内容説明

友人の死に導かれ夜明けの穴にうずくまる僕。地獄を所有し、安保闘争で傷ついた鷹四。障害児を出産した菜採子。苦渋に満ちた登場人物たちが、四国の谷間の村をさして軽快に出発した。万延元年の村の一揆をなぞるように、神話の森に暴動が起る。幕末から現代につなぐ民衆の心をみごとに形象化し、戦後世代の切実な体験と希求を結実させた画期的長篇。谷崎賞受賞。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

159
再読。何度読んでも、一種の難解さが立ちふさがるようだ。それは、ひとえにこの小説が、大江の極めて個的な体験と、その時期の思想に立脚しているからだろう。大江文学の重大な転換点にもあたると思う。『個人的な体験』は、第3者を仮構したバードを主人公として語られていたが、ここでは大江を思わせる「僕」が主人公であり、物語の語り手である。もちろん、「僕」は大江自身ではないし、何重にも時間と空間が重層したメタフィクションの中でのフィクションとしての「僕」である。自己処罰、恥辱、絶望と物語世界はひたすらに沈鬱だ。2012/08/06

遥かなる想い

129
本の中で奇妙な部分だけをなぜか覚えていることがあるが、本作品の「朱色の塗料で頭と顔を塗りつぶし裸で縊死した友人」がこれに当る。安保闘争の時代わけのわからないような情熱・時代の雰囲気が有り、大江健三郎はそれを万延元年の一揆になぞらえながら描いたのだとは思う。タイトルにある万延元年は1860年であり、自ずと作者はその100年後の安保闘争(1960年)を想定していたのかもしれない。文章は難解であるが後年の読んでいてもさっぱりわからないという難解さではない。 三島由紀夫『奔馬』に似ていると思ったのは私だけだろうか2010/06/19

かみぶくろ

72
4.3/5.0 猗窩座が言うところの「至高の領域に近い」ってのは文学的に言えば多分こういうことだと思う。2021/01/11

Vakira

69
この本、講談社文芸文庫、他の講談社文庫に比べ1.5倍以上割高。確かに巻末にはケンちゃんの経歴が数ページ ファンには嬉しいのかもしれないが、文庫492ページで1,782円。ノーベル文学賞受賞対象作品だからなのか。でも高過ぎ。講談社さんズッコイ。文庫のページ数からの金額を世間並みにして欲しい。さてこの小説、情景表現は詩人のそれ。文学的。何をもって文学的なのか?ストーリーの進行ではなくその情景の文章表現に感動がある。巷では作家の事を先生と呼ぶがこの文章表現なら納得しよう。しかし会話表現になるとやたら強烈。2018/11/03

NAO

66
大江健三郎追悼の意をこめて、再読。鷹四は「戦争に行かなかった者、戦わなかった者」の負い目を持ち続けているようだ。蜜三郎の妻は、障害のある子どもを産みその子を養護施設に預けてしまったことに負い目を感じており、いつも一人で暗い思考に落ち込んだままあらゆることを傍観しているだけの夫より、心に傷を負ったままそれでも行動しようとする鷹四に惹かれている。安保闘争直後の不安定な社会。日常生活の大きな変化への戸惑い。そして、作者自身の個人的な事情。重たいテーマ三つが複雑に絡み合った話は、なんとも淫靡だった。2023/03/21

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