内容説明
結婚生活に失敗した独り暮しの作家矢添と画廊で知り合った女子大生紀子との奇妙な交渉。矢添の部屋の窓下に展がる小公園、揺れるブランコ。過去から軋み上る苦い思い出……。明晰・繊細な文体と鮮やかな心象風景で、一組の男女の次第に深まる愛の〈かたち〉を冷徹に描きあげ人間存在の根本を追究する芸術選奨受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
buchipanda3
86
昭和41年の作品。作家を生業とする中年男性・矢添と年若い女性・紀子との情事、そして彼の自意識の揺らぎがが描かれる。淡々とした筆致ながら、その背後に潜むどうしようない捻くれた繊細さにじわじわと侵食されるような感触を覚えた。さらに作中作のAに自身を重ねる矢添、それに重なるかのような著者という関係に妙味を感じた。重ねるというか自分との適切な距離感を探しているとも思える。女性と濃い関係を持つこと、喪失を迎えることの狭間での焦燥の中、ブランコから降りれない様。だが隠されたものが顕示された時、それは否応なく定まった。2025/10/08
mike
66
綾野剛の映画の原作と聞いて興味をもった初吉行さん。バツイチ中年作家と女子大生の恋愛小説。この作家の書く表題作が入れ子となっているところが面白さか。それと女は道具だと考え、若い子の前でニヒルに振る舞う主人公が、総入れ歯の秘密を何としても守ろうとする姿は滑稽。でも純文学はやっぱり苦手だな。どう受け止めてどう感想を書いたらいいか分からない。2025/10/19
はまだ
24
売春宿で、なじみの売春婦を、「道具はやはり使い慣れたものが良い、と彼は思っている。」「車の中で放尿することが、この若い娘の異常な嗜好であり情事の誘いであるとすれば、しりごみするわけにはいかない。」などと。文章つよい。「反撥するということは、その対象との間に冷たいはっきりした距離ができていない証拠とも言える。」「紀子の笑い顔に、笑わぬ目がはめ込まれ、その二つの目が彼を窺っている。」文章うまくない?! 遊びだったのが恋人になる的なないよ。でも、セフレは、恋人にならないって聞いたんだけど(誰に。☆4.52020/03/11
ちぇけら
21
星も月もたいしたことないと、愛をみうしなって言った。四十歳、結婚して離婚した。愛なんて、人間関係なんて、チッポケだとおもった。窓からみえる、小さな公園みたいに。「おれたちの間には、初めからどんな関係もありはしない。何もないところでは、終わりも始まりもあるわけはないさ」だれとも心をかわそうとせず、安宿で女を道具として抱く。小説と「小説」がまじりあい、主人公と「主人公」がまじりあう。そして女の子がオシッコを漏らし、突然はじまる恋。あなたに虐められたいのと女の子は女になって、情慾はふくれて男は男になるのだ。2019/03/13
ステビア
16
タイトルがいいよね。内容はまさに吉行って感じのエロさでした。2015/07/01
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- 恋という名の罠に落ちて ハーレクイン




