内容説明
日々のささやかな移ろいの中で、眼にした草花、小鳥、樹木、そして井伏鱒二、木山捷平、庄野潤三、西条八十、チエホフら親しんだ先輩、知己たちについてのこの上ない鮮やかな素描。端正、精妙な、香り高い文章で綴られた自然と人をめぐる、比類なく優しい独得のユーモアに満ちた秀抜なエッセイ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kana
35
昭和の徒然草、とでもいえば伝わるでしょうか。美味しい珈琲を飲みながらゆっくりと読み進めるのが最も似つかわしい。日常のほんのささやかなことを、ありのままに伝えているだけなのに、生きることの可笑しみと哀しみが垣間見え、穏やかで風流な心持ちになるとっておきのエッセイでした。表題作含め、特にお酒を飲んだ時の陽気な感じが落語のようで好きでした。庭に植える植物や飼育した小鳥たちとの日々はそれが決して長くはない一時の出来事だからこそ小春日和のように瑞々しく輝きを放ち、本を読むことの幸福さが身にしみてきます。2015/03/08
うた
12
小沼丹は随筆が面白い。先日読んだ短編小説よりも細やかさがあり、特に日々の雑記、友人や師匠との交流はすっとぼけた感じが読んでいて可笑しくなってしまう。こじんまりとしているようで、読者に荻窪をぶらつきながら井伏さんの本でも読もうかと思わせる緩やかな広がりがある不思議な本だ。2020/08/29
月音
5
ささやかな日常を切り取ったエッセイは、淡く色をのせた水彩画を思わせる。澄んだ明るさとユーモア、そして物悲しさ。酔った筆者のテレビ購入の顛末に笑い、さてオチはというと、庄野潤三登場で著作そのままのほのぼのエピソードで締められる。日記に娘の着物をあつらえたことを何心なく記しているのに気づき、本来なら急死した妻が気にかけただろうことを自分がしているのにほろ苦さを感じる。こうしたところに筆者の飾らない巧みさ、味わいがある。エッセイでも、短編小説を読むようだった。2024/03/26
カワハ
5
日常を淡々とした短い文章で描写しているのですが、さりげないユーモアと少しばかりの感傷がとても良い案配で配合されています。なので、さらっと読めるのに心地良い余韻が感じられました。何でもかんでも写真に撮って思い出を残すのも結構だけれど、こんな風な文章で残すことができたらどんなに良いだろうと憧れます。2019/03/18
あくび虫
5
よく分からないけれどうっとりしてしまう、本当に素敵な筆致です。物柔らかなウィットと、どこか優しいアイロニーには、どこか可愛らしいおかしみがあります。なんだか、滑らかな手触りを感じるようです。2018/06/03
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