内容説明
被爆地長崎。敗戦後3年目の夏、華僑の女柳慶子と画家麻田晋は出遭った。原爆病に脅かされる2人はいたわり合い、自らの生を確かめるように愛し合い、10数年の苦痛の果てに死んで行った。著者の故郷長崎の、酷く理不尽な痛みを深い怒りと哀惜をこめて強靱に描く。原爆を告発した不朽の名作。野間文芸賞受賞。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
安南
21
長崎には『樹影』の碑があるという。そこには作品の一節「あの人たちは何も語らなかっただろうか あの人たちは本当に 何も語らなかっただろうか あの人たちは たしかに饒舌ではなかった それはあの人たちの 人柄に先ずよっていた」と刻まれている。目には見えない放射能に身体を内から蝕まれる被爆者たち。その苦痛、恐怖、語られることの無かった絶対的な孤独を一組の恋人達を主人公にリアリスティックに執拗に描きだしている。二人が身体の不調を自分等の屈託に因を求めて原爆症という絶望を直視しないようにする様は読んでいて辛かった。2013/08/13
トッシー
3
先日読んだ「新版ナガサキ―1945年8月9日」の中で紹介されていた本です。長崎出身の佐多稲子、名前は知っていましたが小説は初めて読みました。戦後間もない長崎で出会った画家と華僑の女性。被爆、後遺症、在日外国人、不倫といった深い痛みを心の奥底に抱えながら愛し合い、死んでいった二人。「この人たちは饒舌ではなかった。(…)それほどこの人たちの苛立ちと恐怖は二人の間でさえ形になし得ないものであった。それはただ微妙なかげりとして意識されつつ自分自身をさえ瞞着するものであったろう。この折り重なった屈折…。」(p.8)2020/08/16
あや
3
長崎に住む実在の華僑の女性と既婚の画家の被爆したあとの道ならぬ恋愛と恋愛を通り過ぎて原水爆禁止運動に身を投じて行く華僑の女性をモデルにした原爆小説。放射能の脅威を静かな筆致で描く。物語の中盤に語り口調が突然佐多稲子さんの叫びと思われる1行が立ち現れる瞬間がある。何度も読み返したけど静かな筆致の中でそこだけ凛と主張する譲れないメッセージを読み取ってほしい。2020/03/13
ゆずぴ
1
主人公二人ともダメダメなので見てていらいらする。あの頃の長崎の雰囲気とかは見てて面白かったけど、華僑が華僑がとうるさい慶子とどっちつかずの答え出せないヘタレ麻田では先が見えるというか。麻田死去以降の慶子に作者を投影させてるのかと思うぐらいに面白くなかった。そこまでは面白いといえなくもないのに。2013/08/31
ステビア
0
どうもはまらなかった 流し読み2013/08/18
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