講談社文芸文庫<br> 悲しいだけ 欣求浄土

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講談社文芸文庫
悲しいだけ 欣求浄土

  • 著者名:藤枝静男【著】
  • 価格 ¥1,353(本体¥1,230)
  • 講談社(2017/01発売)
  • ポイント 12pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784061960336

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内容説明

緊張した透明度の高い硬質な文体。鋭角的に切り抉られた精神の軌跡。人間の底深い生の根源を鋭く問い続ける藤枝静男の名篇「欣求浄土」「一家団欒」を含む『欣求浄土』、藤枝文学の極北と称賛された感動の名作、野間文芸賞受賞の『悲しいだけ』を併録。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ドン•マルロー

29
連作小説の表題作2編を収録。全編を貫くのは老境に至った者の生々しい死への予感、もしくは諦観だ。死んだ妻や迫りくる死への思いが克明に、ときにグロテスクな筆致でしるされている。山や巨木などの自然描写が執拗なまでに繰り返されるのも、死を直視し、肉体から抜け出て世界と一体となることを意識し始めたゆえなのだろう。その眼差しは「一家団欒」において、唯一、死後世界にまで及ぶ。非常に心揺さぶられる作品で、死者となった主人公は、墓の下で死んだ父や夭折した姉と再会を果たし、家族はそこでようやく真の安穏と和合とを手にするのだ。2016/05/02

メタボン

23
☆☆☆★ 私小説の極北。玄人好きのする文章なのだろうが、あまりにも渋すぎ、欣求浄土の大半は読み進めるのが正直つらかった。しかし「一家団欒」のこの境地は、きっと藤枝静男にしか書けないものなのだろう。この一篇だけでも読む価値はあると思う。「悲しいだけ」の連作は、やはり表題作が突出して良い。題名通り、妻を亡くした悲しみの境地はただ悲しいだけという諦観とともに自らの終焉も予感させ、心に染み渡る。2019/01/02

ソングライン

17
作者自身を主人公にしたような一人の医師の幼き日の思い出、自然に対する執着にも似た想い、そして訪れる死と安寧を描く「欣求浄土」、妻との死別、古代青銅器や仏像への深い造詣、自宅に棲む鳥獣たちへの愛着を綴る「悲しいだけ」。欣求浄土の最後の章「一家団欒」で、自分の死を永遠の暗黒世界と認識する主人公が、死後既に亡くなった父、兄弟と再会し、その団欒に安らぐ描写に、驚くも次第に心が安らいでいく読書でした。2019/06/25

メルキド出版

13
「悲しいだけ」読了。「魚服記」「楢山節考」「キッチン」に次いで泣いた作品。2018/03/21

三柴ゆよし

13
連作小説「悲しいだけ」、「欣求浄土」の二篇を収録。自然の描写、とりわけ山や巨木に向けられたまなざしが、「厭離穢土」における主人公の「死」によって一旦の落着を得るが、更にそれが「一家団欒」での「死後の生」に至って引っ繰り返る。「田神有楽」でもそうだったが、この人の場合は実験的手法をあえて心掛けているというより、むしろ「ありのままに書くこと」の、その極北に聳えるものを見つめている。とりあえずは同文庫から出ている『田紳有楽/空気頭』、しかるのちに本書、という読み方がオススメ。2010/01/27

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