内容説明
三品財閥の女婿である外交官の鳥栖庄五は役所の機密書類を密かに持ち帰る途中、秘密探偵社の一団に誘拐される――社会機構を痛烈に風刺した「影」をはじめ、幻想的世界と現実とが妖しく交錯する「裸婦変相」、喜寿を迎えた名妓お花が11歳の幼女に変貌する奇談「喜寿童女」ほか、「ほととぎす」「大徳寺」など、鋭い批評眼と絶妙な文体で描かれた中期作品群より7篇を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
AR読書記録
4
私の雑な印象では安部公房と江戸川乱歩のあいだくらい、という感じがあって、どのへんでそう思うか考えるに、会社や社会などと、その圧倒的な力、不条理の前に太刀打ちできない(ように思える)個人、という対立の構図と、しかし女の世界にはオカルティックなまでの神秘的、霊的な要素というのが当然のように内包されているところとか、か。なんかこう、現代の入り端の落ちつかなさみたいな。んー、まだうまくいえんな。しかし全般に、“女性”に対する畏怖というかファンタジーというか神秘化が過ぎる気がしてな。男の文学やなと思っちゃうな。2014/11/10
eazy
1
石川淳を読むのは初めて。不思議などこか演劇的でメタフィクションでさえある石川淳を読むのは初めて。不思議などこか演劇的でメタフィクションでさえあるシュールな作風。当時、石川は60歳。そのことに驚いた。2001/08/14